料亭遊戯-1
恋仲だった保太郎が梓の前から姿を消して、一ヶ月が過ぎた。
身分違いの恋は梓の見合い話が浮上したことで、儚く壊れてしまった。
梓は今日も竹林に来ていた。静寂の中、梓の落ち笹を踏む音が微かに響いている。
「…保太郎さん…。」
この場所で、その名を呟くと梓の脳裏には、保太郎との最後の睦み合いが蘇るのだった。
胸が締め付けられるように痛み、思わず、太くて逞しい一本の竹に寄りかかっていた。
「保太郎さん、保太郎さん…」
涙がぽろりぽろりと頬を滑り落ちる。
日を追う事に保太郎の居ない現実が悲しみに変わり、梓は涙を流してしまうのだった。
保太郎がいなくなってから、着物は洋服ばかり着るようになった。長い黒髪は肩までバッサリと切り落とした。
が、それらは何一つとして梓の悲しみが消える程の影響力はなかった。
私…こんな気持ちのままお見合いできない。できっこないわ…。相手の方にも失礼だわ…。
その方を好きになれるかしら。
その方に笑顔を見せられるかしら。
その方と…触れ合えるかしら。
不意に、体の奥からある感情が沸き上がるのを感じた。
「…保太郎さぁん…っ」
梓の性欲がねっとりした煙のように、梓を支配しはじめた。
「だめ…だめよ…こんな事…。」
言葉とは裏腹に、竹にしがみつき脚で挟みこんだ。
「あぁ…だめ…」
ゆっくりと腰を動かし、感じる部分を竹にすりつける。
その度に白いワンピースの裾はひらひらと可憐に揺れた。
しかし今の梓は可憐なんてものではなく、ただ快感を求めるだけの動物のようだ。
涙はいつしか止まっていた。そのかわりに秘部からは愛液が流れ出し、ワンピースに染みが広がる。
「…はあぁ、あぁ…はぁ…ん…」
瞳は虚ろな色を放ち、口元はだらしなく開いている。
それでも腰は相変わらず動いている。
それに合わせてかすかに淫らな音もしていた。竹と秘部の隙間でトロける液体の粘着質な音…。
「あ、あぁ、いぃ…っ…気持ちいい…ぁは…はぁん…あっん…んン…」
次第に腰の動きが速くなり、梓の様子も最高潮に達しそうな感じだ。
「あん!あ、あ、ああぁぁぁひぃ…んっ!!」
びくっ、びくっと体が震えて、再び秘部に刺激が与えられると、
「はぁぅ…つ!あぁぁっ!きゃあぁ…」
はしたなくも、またイってしまうのだった…。
数分経ち、段々と呼吸がととのってくると急に我にかえる。
私ったら…。なんて事を…。
余りの痴態に罪悪感でいっぱいになってしまった。
梓はスカートの染みを気にしながら、慌てて屋敷へと小走りで消えた。
「はぁ…。」溜め息を吐きながら、梓は自分の部屋で新しいワンピースに着替えた。
くすんだ水色のワンピースに淡い黄緑のカーデガンを羽織り、部屋を出る。
廊下の先で待ち構えていた女性が少し怒った顔をして言う。
「梓、遅いじゃありませんか。先様はもういらしているのよ。」
「…すみません、お母様。」
「さ、行きましょ。大事なお見合いよ。しっかりね。」
今日はついにお見合いの日だ。
それなのに梓は竹林であんなことをしてしまったのを恥じていた。