出会う-4
……なのに。
ジッ、ジッと何度もライターのドラムを回転させるけど、ガスが切れているのか一向に火がつかない。
『モナリザ』のライターは、真っ黒なライターだったから、ガスの残量が見えなかった。
――うわあ、ホント最悪だ!
心の中でそう叫びながら、あたしは何度も何度もライターのドラムをまわしていた。
でも小さな火花が散るだけで、一向に火は点かない。
『モナリザ』は新しくて綺麗だし、広いし、アメニティも豊富だし、食事のメニューもドリンクも豊富だし、その割にリーズナブルで大好きなホテルだったけど、もう二度と行かない!
ライター一つで大切なお得意様を失った、顔も知らない『モナリザ』の哀れな経営者に、古いけど心の中で中指を立ててやった。
しかし、現実は結構恥ずかしい局面に立たされているあたし。
何度チャレンジしても点かないライターに、恥ずかしさといたたまれなさで泣きたくなってきたあたしは、一刻も早くこの場から逃げ出すことに決めた。
くわえていた煙草を再びボックスの中に戻そうしたその刹那、
「……よかったらどうぞ」
と、見るに見かねたらしい男はぶっきらぼうにそう言うと、あたしに自分のライターを寄越してきた。