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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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出会う-5

コンビニで売られているであろう、緑の百円ライターは、液化ガスがたっぷり入っていた。


今の自分が惨め過ぎて、借りるかためらっていたけど、男の手が急かすようにズイッと突き出してくるもんだから、仕方なしにあたしは


「……すいません」


と聞こえないくらいの小さな声で、ライターを受け取った。


ジッとドラムをまわすと一回で着火した。


それが余計にあたしを惨めにさせ、顔を上げられないまま煙草に火を点けてから、ライターを男に返した。


その時、ふと男のお腹の辺りに視線がいった。


あたし達の職場は、首からぶら下げるタイプの名札を着用している。


もちろん、あたしも“宗川玲香”とゴシック体で書かれた名札を首からぶら下げている。


こんな所で煙草を吸っているくらいだから、この男もここで働く奴なんだろうと思っていたけど、その名札の中身を見てあたしは思わず顔を上げ、男の顔を凝視してしまった。


その名札には、先日文屋さんが散々けなしていた、“久留米ゲイ介”ならぬ“久留米圭介”の文字が並んでいた。



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