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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《トロイメライ》-6

 中学2年の秋。修学旅行で都心に出た。あたし達は小さな田舎町の出身だったから、学生服が恥ずかしかったのを覚えてる。その時があたしと聖の分岐点…だった。

「ねぇ、君かっこいいね。どこか事務所とか入ってる?」
 当時セックスをしてた事もあり、聖は少し大人びた雰囲気を持っていた。元々、顔は整っていたし、バスケ部だったから身長も170近かった。加えて、時々見せる悪戯っ子みたいな表情や、澄ました近寄りづらい表情。クルクル変わる表情に惹かれた、とそのスカウトマンは言っていた。
 初めは戸惑っていた聖だったけど、最後は……。

「苺…もう、やめよう……」
 身体を重ねた直後の事だった。
「え…な、なん…で?」
 喉がカラカラで上手く話せない。
「…俺、スカウト受けようと思う」
 ドクン…予想していたけど、正直…胸が張り裂けそうだった。
「俺、自分を試してみたいんだ。…今まで俺に可能性が在るなんて考えた事もなかった。だから……苺?」
 涙が自然と溢れてくる。泣いちゃダメって思う程、喉がジリジリして涙が止まらない。なんでだろ…自分でも解らないのに…行っちゃヤダ。行かないで、あたしは……
「聖が、いなくなると…あたし……どうしたらいいの…?」
「苺……」
 想いが上手く伝えられない。もどかしい。
「ヤダよ…。聖…行かないで。あたし…聖とずっと一緒に…」
 頭では解ってる。どんなに足掻いても聖は行ってしまうって。だけど…だけど……!
「聖…っ」
「苺、そんなんじゃ駄目だよ。俺がいなきゃ何も出来ないなんて……」
「嫌、嫌だっ…ずっと一緒って…」
「苺。俺もずっと一緒にいたいよ。でもさ、良い機会だと思うんだ。」
 こんな状態なのに笑みを浮かべている聖に対して無性に腹が立った。
「怒るなって。顔に出てる。……ったく。」
 くしゃくしゃって頭を撫でられる。こうされるとあたしが弱いって知っているんだコイツは。
「良い機会っつーのは、俺ら互いに依存しあってるだろ?お互いがいないと何も出来ない。そんなの全然駄目だろ?」
「なんで?」
「地に足が着いて無いんだよ。このままだったら、どっちかが疲れるのが目に見えてる。そんなんじゃ、一生一緒にいるなんて出来なくなる」
 ちょっと照れくさそうに笑うのをあたしは見逃していた。頭ん中は聖の言葉でいっぱい。理解しようとしても、頭に全然入って来ない。
「俺、頑張るから。苺も頑張ってくれよ」
 もう言葉にもならない。聖は戻って来ない。あたしは聖に捨てられた……。
「じゃあさ、約束しよ?」
 少し困った顔で、聖が提案してきた。昔からやってる約束のサイン。小指を絡める。触れる指が熱い。
「…俺がいない間、ツライ事も悲しい事もあると思う」
 頭の上で聞こえる聖の声が微かに震えている。確認しようと思って顔を上げようとしたら、空いてる手で頭を押さえられた。
「見んな。このまま聞いて。…俺は新しい世界で、それだけで精一杯生きれるけど…苺はきっと一人じゃ居られない時が来ると思うんだ。そんな時は……俺に構わず、恋していいからな。」
 鼻を啜る音が聞こえる。
「聖…以外なんて…あたし絶対に好きにならないよっ!」
「……ん、あんがと。でな、俺が…成功して帰って来た時、もしお互いに今と同じ気持ちだったら……今度こそ、一緒にいよう。………俺と結婚して」
 押さえてた手がいつの間にか頭を撫でていた。「いつ…いつ帰って来るの?」
「う…えっと……それは……」
 言葉に詰まる聖。
「一年?三年?五年?十年?あたしお婆ちゃんになっちゃうよ?」
「まいったな…。そこまでは用意して無かった…。一年は無理だな。三年…も無理……。」
「じゃあ…六年!あたしたち二十歳になるし」


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