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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈ホールドアップ!!〉-9

『……景子君……殺したいなら早く撃ったらどうだ?』


笑みは崩れない……もしかしたら、八代は最初から景子は「自分は撃てない」のだと、読んでいたのかもしれない……普通、銃口を向けられたなら、狼狽えるものだ……。


「頭がいいかしら?それとも心臓?……最後の望みだけは聞いてあげる……」


死の宣告にも動じず、平然と立っているだけで、それ自体が景子への威圧となっている。

ブラフは、相手が信じてくれなければ意味は無い。

八代の瞳に動揺は無く、むしろ『撃ってみろ』と言わんばかり。
見透かすような視線を、景子は押し返すだけの説得力を持たない。
護岸に打ち返すパチャパチャと鳴る波の音がやけに大きく、遥か遠くから聞こえてくる喧しい車の排気音が消えていく……。


『君は「撃つ撃つ」と言いながら撃たないんだね?……そうか、撃たないんじゃなくて“撃てない”んだな』

(!!!)


今の八代の言葉は、景子の心中を読んだとも取れるし、拳銃の故障を知っているとも取れる……景子のブラフは無意味な物となり、八代の物となった……またも立場は逆転し、景子はいよいよ窮地に陥った……。


『……来ないのか?なら、俺から行くか』


甲板を踏みしめるように八代は歩みを進め、真っ直ぐに近付いていく。
もう銃口は恐怖の対象でもなんでもなく、ただのハッタリでしかなかった。


『ムンッ!!』

「……クッ!!」


八代は景子の腕を掴もうと腕を伸ばし、景子は掴まれまいと後ろに飛び退いた。
打撃を用いないのは景子が獲物であり、傷物にしたくないという配慮であったが、手にした拳銃のグリップで殴られる恐れを回避する意味もあった。

体重と腕力に勝るなら、胴にタックルを決めて押し倒すのも方策だろうが、そんな事をしたら頭部は硬いグリップの的になるだけ。
それが証拠に景子は拳銃を鋭く振り抜き、八代に渾身の打撃を打ち込もうとしている。
前傾姿勢になり、または仰け反ったり、殴る者と掴む者は一進一退だ。


(優愛…ッ!!)


涼しい顔の八代とは対照的に、景子はもう汗だくになっていた。
パトカーに追い回され、飛び跳ねて逃げ回ったのだから無理もない。
渾身の一振りは次第に速度が落ち、その拳銃を握っている事すらきつくなってきていた。



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