頭の中で鳴る警報-6
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ボスッとベッドに倒れ込むと、高いヒールで歩きまくった足がじんわりと痺れを放出した。
青白く光る、眩しいシーリングライト。エアコンを入れたばかりだからまだまだ蒸すように暑い、手狭なワンルーム。
それらはいつもとなんら変わらないはずなのに、やけに鬱陶しく感じて、あたしは右腕で瞼を覆い隠した。
視界が遮られると、浮かんでくるのは大好きなアイツの姿。
ちょっぴり髪は伸びてたけど、相変わらずイイ男だったし、あたしに向けた屈託のない笑顔は変わっていなかった。
なのに、感じ取ってしまう距離感。
あたしだけが取り残され、陽介が先を歩いているような気がした。
必死に走っても追い付けない陽介の背中。その隣で彼に微笑んでいたのは……。
ふわふわした笑顔で陽介を見つめる恵ちゃんの姿が勝手に浮かんできて、あたしは思いっきり舌を鳴らした。
そして昼間見た彼女の姿をじっくり思い出してみる。
オドオドした、弱々しい目つき。間抜けに開いた口元。
陽介が今まで付き合ってたカノジョの中でダントツに冴えないあの女こそが、陽介に選ばれた女だなんて。
何がよかったの? 性格? 身体?
あたしはギリリと奥歯を噛み締めながら、ベッドの下に置いてたストローバッグからスマホを取り出した。
指を画面で滑らせて、ある画面を表示させてみる。
そこには、肩から上しか写ってないけれど、このベッドで裸で並んで撮ったあたしと陽介の画像があった。
ふざけて撮った、愛し合った後のあたし達。
あたしはすっぴんだし、乱れに乱れてしまったせいか、二人の髪もボサボサになってるし、全然イケてなくて「撮り直してよ」なんて文句をつけたけど、「お前のすっぴん、俺大好き」なんて言って無理矢理あたしのスマホにも画像を送ってきたんだっけ。
陽介が大好きって言ってくれた、画像の中のすっぴんのあたし。
番号もアドレスも変えてしまった陽介の中に、もうあたしはいないですか?