頭の中で鳴る警報-3
「ああ、悪ぃ。俺、女できたからケジメつけたの。だから番号もアドレスも替えたんだ」
そんなあたしの想いなんて知らない陽介は、あっけらかんと笑って言う。
予想はしていたけれど、彼の口からハッキリ言われると頭に大きな石を落とされたような衝撃を受けた。
今までならカノジョが出来ても、番号やアドレスを変えるなんて、そんな面倒なことしなかったじゃない。
……そんなにその娘が大事なの?
「彼女、できたんだあ」
気付けばあたしは、陽介の隣の女の子を上から下まで舐めるように眺めていた。
やっぱり大したことないじゃん。
チビだし、地味だし、服も冴えないし。
見れば見るほど苛立ちは募る。
自分が勝てない相手なら納得できるけど、目の前のこの娘はどう見てもあたしより格下。
こんな娘のために陽介との繋がりを断たれたんだと思うと、自然と奥歯がギリッと鳴った。
「あ、あの……福原恵(ふくはらめぐみ)って言います」
そんな中、オズオズと彼女が頭を下げてきた。
自信なさげなその態度に、ついつい鼻で笑ってしまう。
自分でも陽介の隣に並んでるのに萎縮しちゃってるのかな。
実際、陽介はかなりいい男だし、並大抵の女じゃ見た目に不相応だから。
あたしはそんな『不相応な』彼女に向かって、
「あたし、船川(ふなかわ)くるみ。よろしくね」
と、右手で拳を作って口を押さえながら小さく頭を下げ返した。
恵ちゃんは、あたしの名前を聞いた途端、丸い瞳をさらに見開いてこちらを凝視してきた。
ん、何だろ?
今度はこちらがジロジロ値踏みされるみたいに、見られていることに気付いた。
その無粋な視線に不快感が表に出そうになる。……でも。
いくら憎たらしくても、陽介の都合もあるだろうし、あたしと陽介の関係を暴露するようなバカな真似はするわけがない。
あたしと陽介は、恵ちゃんも知らない間柄なんだから。