頭の中で鳴る警報-2
背けた視線の先にいたのは、あたしより背の低い「ふわふわした」女の子。
少しだけ茶色いセミロングの髪が、緩やかなウェーブを作っているからだろうか。
それとも、黒目がちの少しタレた小動物みたいな瞳のせいだろうか。
いや、ポカンと開いた小さな唇からチラリと覗いた小さな前歯のせいだろうか。
とにかくあたしが彼女に抱いた第一印象は「ふわふわした」女の子だった。
陽介の歴代の彼女なら、大抵見たことがある。
大体がスレンダーなモデル風の女の子ばかりだったから、陽介の好みはずっとそんなタイプだって思ってた。
でも、今、陽介と手を繋いでいる女の子は、男好きのするような守ってあげたくなるようなタイプ。
陽介の隣に並んだ女の子が今までにないタイプだったからか、この娘に対して警告音が頭の中で鳴ったような気がした。
ポカンとあたしを見つめるその姿が、やけに間抜けで。
どう見てもあたしよりも見劣りがするその女の子に、思わず舌打ちが漏れそうになる。
何でこんな冴えない娘が陽介の隣に並んでるの?
メラメラ対抗意識が沸いてきたあたしは、真っ白な陽介のTシャツの裾をクイッとつまむと、
「いきなり電話もメールも繋がらなくなっちゃうんだもん。心配しちゃった」
と、甘えたような声でそう言った。
嫌みを言うつもりはなかったけど、自然とそうなっていたのかもしれない。
だって、いきなり陽介と連絡がとれなくなったあの時のショックを、彼は知らないだろうから。
あたしと陽介の間柄は、身体でしか繋がらない、所謂『セフレ』なんだけど、付き合いは歴代の彼女の誰よりも長い。
陽介が甘えて帰ってくる所、それがあたしだったはずなのに、彼はバッサリ断ち切ったから。
恐らく、彼の隣で不安そうな顔をしている『カノジョ』のために。