頭の中で鳴る警報-14
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再びうねり出すその魔物があたしに牙を剥く。
陽介のいない、自分の部屋であたしはその異物を懸命に動かしていた。
頭の中では、陽介に醜態を晒したあの日のことを思い出しながら。
「ああっ、い、いいっ……! 気持……ち……い……い……」
一心に自らを苛め、絶頂に向かう。
バイブを動かさずに、中で蠢く様やクリトリスをひたすら弾く痛みに似た強い快感を噛み締めながら。
「陽介っ、い、イ……ク……」
何度も何度も陽介の名前を呼ぶけれど、それは虚しく宙に消えるだけ。
じっとり汗ばむ肌に長い髪の毛が張り付く。
でも、それを引き剥がす余裕もなく、あたしは両手を動かしていた。
ホント、あたしは変態だ。
久し振りに陽介に会えただけで身体の奥をジットリ濡らして、彼を想って自慰行為に耽るなんて……。
きっと今頃陽介は、カノジョを……恵ちゃんを抱いているかもしれないのに。
でも、止められなかった。
「あああっ、陽介……っ、もっと、激しくしてぇぇ!」
うねりも振動も最大限になり、あたしは唇の端からツウッと涎をたらしながら脚を閉じた。
背中は弓なりに仰け反り、口は緩みっぱなしでひたすらに陽介の名前を何度も叫びながら、あたしは絶頂を迎えた。
「やっ、陽介っ……、イクッ、イ……クッ、ああああん!!」
激しい責めに、一瞬血の気が引いたみたいにゾクッと身震いしてから、ぶわあっと全身に鳥肌が立つ。
下腹部から広がった快感は、そんな風にあたしの身体を駆け巡った。
ピタリと時間が止まったように、身体が固まってエクスタシーを溜め込んで、それから息を吐くように放出し、脱力する。
案の定、襲ってくる後悔と虚しさ。
それだけじゃない、今までに感じた事がない、言い様のない不安。
陽介の隣にいた、歴代のカノジョ達とは違うタイプの「ふわふわした」女の子。
そして、都合よく扱えるあたしですら、その繋がりを断った陽介。
「はあっ、はあっ……」
弾む息が次第に落ち着いていっても、頭の中で鳴る警報は、いつまで経っても鳴り止むことはなかった。