頭の中で鳴る警報-13
「おー、ノッてきたね、くるみちゃん」
「違っ……あああんっ、やっ、やだあっ……」
「違うのにしっかり咥えてんの? くるみはやらしいなあ」
バカにしたような笑みがあたしを見下ろす。
……酷い男。
死ぬほど気持ちいいし、身体は有り得ないくらい感じまくってるけど、やっぱり自分でシてるのを見られてると思うと、涙がポロポロ出てくる。
彼女には、こんな酷いことしないんでしょう?
「ホラ、そのやらしい顔見せて、一人でイケよ」
「はああ……、やっ……い……や……」
惚れた弱味とは言えど、あたしにだってプライドは(それも人一倍の)あるわけで、イキたい欲求とこれ以上の醜態を晒してなるものかというプライドが、あたしの中でせめぎ合う。
そしてこんな淫らな姿を晒したら、引かれちゃうんじゃないかという不安。
下唇を白くなるまで噛み締め、ひたすらイヤイヤと首を横に振るあたしは、最終的にプライドが勝ち残ったようだ。
イッたら負け。一人で勝手に決めたルールに従い、あたしはそっとコントローラーのつまみを弱めていった。
あたしが欲しいのは単なる快楽じゃないから。
そしてそのままスイッチを切ろうとした刹那。
「くるみ? 俺さ、お前がイク時の顔、めっちゃエロくて可愛くて大好きなんだよね。だから、恥ずかしがらずに最後までシてみせて」
耳元で囁く陽介は、そう言ってあたしの耳たぶを甘噛みした。
恐ろしく優しい声で。
「やん……っ」
「大丈夫、お前が一人でシてる姿めちゃ可愛いよ。たまんねえ、沙羅(さら)よりもそそる」
そう言って彼は、当時付き合っていた彼女の名前を出した。
多少荒い息は、本当に興奮しているからだろう。
どこまでもズルい男。
そうやって彼女より誉めれば何でも言うこと聞くと思ってんでしょ?
口だけだと頭でわかっても、身体はあたしの命令に背いて陽介の言われた通り、登りつめる準備を始める。
……悔しい、なんであたしはこんな酷い男をこんなにも好きなんだろう。
「な、くるみ? 大好きだよ」
ニヤけて茶化す陽介が憎たらしい。
「…………」
その口だけの「好き」を密かに噛み締めながら、あたしは再びバイブのスイッチを入れた。