紅館小話〜湯〜-1
ある暖かい日、今日もシャナはウェザと一緒に過ごしていた。
今は午後のお茶の時間、二人とアルネは白竜館三階のウェザの部屋でお茶を飲んでいた。
『………美味しいですね、紅様。』
『あぁ、アルネの煎れた紅茶は絶品だな。』
紅様がそう言いながらアルネに笑いかけると、アルネは嬉しそうに笑いかえした。
『二人が美味しそうに飲んでくれますから、こちらも煎れたかいがありますわ。』
最近はアルネにも恋人が居るらしい………と、メイドの間で噂になっている。
実際にはどうなのかわからない。 だが、最近になってアルネの表情が明るい事は確かだからたぶん本当なのだろう。
『本当に………穏やかで良い午後の』
ドドド〜〜〜〜!!!
アルネが言葉を言いかけたまま固まる。
『………今度はなんだい?』
さっきの大きい音の後、まるで滝の様な水音が庭から聴こえてくる。
『うわぁ〜〜〜い♪ 出たぁ〜〜〜♪』
そして、音源ではしゃいでいるのはお約束のようで、ゼロだ。
窓から見ると、スコップを持ったゼロが飛び跳ねている。
それよりも注目すべきは、地面から大量の水が吹き出していることだ。
いや、水ではない。 それは湯気が出ている。
温泉なのだ。
『ゼロのやつ………温泉掘ったのか………』
いや、こんな火山の近くでもない場所で、スコップで掘れるような深さに温泉なんてあるわけ………
アルネも、この非現実的な事態に片手を頭に乗せて悩んでいた。
『ご主人たま〜〜♪ 温泉出たよ〜〜♪ 入ろ〜〜♪』
しかしゼロの方は気にしていない様子で、私達を手招きしている。
『そうだな、アルネ、至急露天風呂でも庭に造るよう手配してくれないか?』
『は、はぁ………でもなんでこんなところで温泉が………』
『さぁ………出た物は出たんだから、納得するしかないよ。』
紅様は意外と前向きだ。
かくして、紅館の庭に突如露天風呂(男女別浴)が出来上がった。
『ん〜〜〜♪ わ〜〜〜い♪』
ザッパ〜〜〜ン!!!
『ちょっとゼロ! 飛込まないでよ!』
木で造られた大きな浴槽に白く濁った湯が満ちている。 これなら10人位入っても狭くないだろう。
今はその浴槽に私を含めて5人が入っている。
温泉を堀当てたゼロと、仕事が早く終わったスーとクリスと、そしてアルネが入っていた。
『そういえば、こうして皆さんとお風呂に入るのは初めてですね。』
紅館にも一応大浴場が存在する。 だが、個室にシャワーもあるため、私は入ったことが無い。
『たまには良いかしらね。 楽しいしね。』
アルネさんとスーさんは長い髪を縛ってまとめているため、ちょっと別人に見える。
『温泉〜♪ 気持いい〜♪』
プカプカと浮かんでいるゼロ。 この気持ち良さを求めて掘ったと思っていたのだが………
彼女の目的は他にあった。
『えい♪』
『キャッ!』
急にゼロが私の胸を鷲掴みにし、揉み始めた。
『ん〜♪ やっぱりシャナちゃんのは張りがあって………び・にゅ・う♪』
そう、女の子大好きなゼロにとって、こういった皆で入るお風呂はまさにパラダイスなのだ。
『ちょっ、駄目です! ゼロさん!』
『スキンシップスキンシップ♪ シャナちゃんもゼロゼロの揉んで良いよ♪』
そういって私の手を自分の胸に運ぶが、私は揉んでも楽しいわけでは無いのに。