憐みの人魚 ☆-1
……僅か数十秒の沈黙の後。
驚くべき事に留吉は、加奈の両脚を拡げその間に自身の身体を割り入れる。
そして太腿付け根に唾液を塗り付けると、陰茎をあてがい始めるのである。
鬼畜極まりない事に、死姦を行おうとする留吉。
しかし耳を澄ますと、死んでいるはずの加奈の口元より呼吸音が聞こえる。
逆上した留吉は咄嗟に加奈の首を絞めてしまい狼狽えたが、呼吸音に気付くと落ち着きを取り戻す。
そしてまだ穢れを知らぬ加奈の膣孔に、幾人もの少女たちを犯し貫いた陰茎の先端を潜り込ませる。
気絶していた加奈は、自身の下腹部を引き裂く激しい痛みに意識を取り戻す。
留吉の陰茎は時既に遅く、三分の二程が加奈の中に捻じ込まれていた。
自分の身の上に突然降りかかった絶望に、加奈は気も狂わんばかりの抵抗を見せる。
その唐突なまでの加奈の攻勢に、流石の留吉もバランスを崩され折角捻じ込んだ陰茎が抜け落ちる。
それでも留吉は年老いたその風貌に不釣り合いな素早い身の熟しで、再び加奈の口元押さえ付けその身体を床に押し付ける様に捻じ伏せる。
意識こそ取り戻した加奈だったが、根本的にその腕力において大きく劣勢に立たされている事に変わりは無かった。
「こうなっては、どのみち俺はもうお終いだ…… 殺して、殺してやる」
目を血走らせそう口にする留吉に、加奈は震えあがり恐怖する。
この男なら、この老人の様に枯れた果てた男なら、本当にしかねない。
加奈が震えあがり恐怖するのは、何も留吉の醜悪な風貌から来るものだけでは無かった。
加奈の目には常日頃より、留吉がまるで“奴隷”の様に映っていたのだ。
持たざる者、失う物無き者、それが加奈の留吉に対する印象であった。
故に恐ろしかったのである。
「お前も噂に聞いただろうが、俺はここに来る前にも同じ事を繰り返している。解っているだろうが、ここには俺とお前の二人きり明日の朝まで誰も来ない。大声で叫べても、誰にも聞こえない。仮にお前の両親が帰宅時間を気にしても、ここへすぐにはたどり着かないだろうよ」
留吉は震え脅える加奈に、更なる言葉の重圧で追い打ちをかける。
「男は一旦こうなったら止まらねぇ、この先端からミルクがたっぷり出ねぇと治まらねぇんだよ。どうする? 生きるか死ぬか? 俺はこのままお前を絞め殺してから楽しんでもいいんだ。そう、どっちでもいい、その後はお前だって解るだろうよ。犯され殺された姿で発見される。最初は誰かな? クラスメートか? 先生か? その後警察にも見られて、皆のしるところ」
生死の狭間を彷徨う窮地の加奈に、留吉は醜悪な肉棒を扱きながら見せつけ、更にこう付け加えるのである。
聞いてるだけで気が狂いそうな感覚の中、加奈は理解した。
この汚らしい老人が言う事は、残念ながら理に適っている。
だからと言って、殺されない事だけを条件に、到底“留吉の求め”を受け入れる事は出来ない。
そんな困惑する加奈の表情を留吉は見逃さず、その心理状態を鋭く的確に読み取った。
留吉も元教師で頭の回転も速く、その観察力は特筆に値する。
(この女は、生への執着が十分にある)
留吉はそう分析した。
しかし、処女の中学3年生がこのまま身体を開く事が無い事も同時に理解していた。
(ここはひとつ俺様の方が“大人”になって、妥協案を出してやろう? そう、これは正当なる取引、互いの合意に基づく行為といこう)
出来れば自分も犯罪者、ましてや殺人者にはなりたく無いし、願わくば今の職も失いたくは無い。
留吉はチラリと掛け時計の針に目をやる。
(こちらも全てを失わない為には、遅くともこの少女を一時間で解放しなければならない)
滴り落ちん程の欲望滾る下半身とは全く別の生き物の様に、留吉の頭脳が急加速で権謀術策を巡らせていく。