温泉休暇の大騒動-14
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大騒動の夜も更け、誰もが寝静まった深夜。
ギルベルトは浄化魔法を使い、情事に疲れ果て眠ってしまったエメリナの身体を清めた。ぐったりした手足を取って、浴衣を着せてやる。
「ん……」
布団をかけようとしたところで、エメリナが小さく呻き、寝返りをうった。
実のところ彼女は、あまり寝相の良いほうではない。
大きく足を動かした拍子に浴衣の裾がはだけ、太もも近くまで露になる。着せ方が甘かったのか、胸元の合わせ目も少しだけ開いてしまった。
「っ……」
扇情的な姿に、ギルベルトは小さく息を飲んだ。
白い肌には、自分がつけた鬱血の痕がまだいくつも残っている。
満足させたはずの欲情が、まだまだ足りないというように沸きあがってくる。
――浴衣、おそるべし。
ゴクリと唾を飲むが、いくらなんでも眠っている状態を襲うのは……と、自分を叱咤する。
もしウリセスがこの場にいたら、間違いなく『ケダモノ』と冷たく言うだろう。
無意識に伸びそうになった手を寸前で引っ込め、急いで布団をかけて自分も隣りで横になる。
エメリナを見たら誘惑に負けてしまいそうで、背中を向けて目を瞑ったが……。
「ふぁ……せんせ……」
寝惚け声と共に、ピトリとエメリナが背中にくっついてきた。どうやら身体が冷えてしまい、寒かったようだ。
すぅすぅ寝息を立てながら、手足をらするりと絡みつかせる。
(……こ、こらぁっ!!)
大好物を前に、お預けを喰らっている気分だ。
退魔士の部隊やオーク、好戦的な同族よりも、この助手はタチが悪いかもしれない。
理性と本能の狭間で苦悩し、ギルベルトは結局、一睡も出来ぬまま朝を迎える羽目になった。
終