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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈晴らすべき闇〉-4

『知らない男ねえ……本当に知らないんだ?』

「……知りません」

『立ったまま服を掴まれて破られたの?それとも後ろから抱き着かれたの?』

「た…倒されて……服を掴まれて……」

『じゃあ倒されてから服を破られたんだ?で、そのまま男が被さる形で乱暴したの?』

「……お…覚えてません……」

『覚えてないって……ちゃんと教えてくれないと、こっちも困るんだよね』

「覚えてないんです……思い返したくないんです……うぅ………」

『辛いのは分かるけど、捜査に協力してくれないとねえ?』

「……うぅ…ヒック……ヒック……もう…言いたくない……」


思春期真っ盛りな美穂に、あのレイプ事件の光景を口頭で述べるのは、再度、レイプされているに等しい苦しみだった。
あの男達は、ふざけて笑いながら制服を剥ぎ取り、口汚い嘲りを浴びせながら純潔を破壊していったのだ。
いくら犯人逮捕の為とは行っても、それらの忌まわしい記憶を思い出し、口に出す事は年端もいかぬ少女には、耐え難い恥辱であり、気が触れそうになる羞恥を伴うものだった。

見る間に美穂は窶れていき、笑顔どころか生気まで消え失せていき、そして…事件から数日後に、家の裏の梅の木で首を吊って命を絶った……。

必死に美穂を捜す優愛の目の前に下がる美穂の遺体には、首や頬に無数の引っ掻き傷があった……それは、縄が動脈を絞めるに至らずに失神しなかった事から、呼吸を妨げられた苦しさに、藻掻き悶えて掻きむしったからだ……。

最後の最後まで、美穂は苦しみ抜いて死んだ。
なんの落ち度も無いのに、ただの被害者なのに、理不尽にも短い生涯を閉ざさざるを得なかった。

遺体を発見した優愛は、そのショックから男性不信に陥り、景子は悪への憎しみから刑事を目指した……。



景子は強く春奈を抱きしめた。

一人で苦悩し、それでも自らを奮い立たせようとする健気さは、あの日の二人の妹の姿が重なりあって同化しているよう。


「麻里子ってさ、私も手子摺る(てこずる)くらい強いのよ?……大丈夫。お姉さんを信じなさい」


心強い励ましにゆっくりと上げた顔は、目元を赤く染めた泣き顔であったが、しっかりと決意に満ちた光があった。
その涙に潤む瞳に映る刑事は、一瞬、麻里子に見えた。
麻里子の気高き魂が、遥か彼方から景子に乗り移ったかのようだった。


「もう泣かないでね。私が一緒に居てあげるから。一人にはさせないから、ね……」


緊迫と柔らかな笑みを備えた景子の表情に、春奈は涙を拭いて頷いた。

まだ何も判ってはいないのだ。
今、麻里子や瑠璃子がどんな境遇にいるのかを。
美津紀や文乃が、何処にいるのかさえも。
春奈は今、泣いている場合ではないのだ。


「……喜多川先輩に言えて良かったです……ちょっと気持ちが楽になれました……」


まだ泣き顔に崩れたまま、僅かな笑みを湛えて春奈はしっかりと頷いた。
麻里子に劣らぬ頼れる先輩と一緒なら、きっと“事件”は解決出来る。
自信とまではいかないが、少なくとも奮い立つ気力は増している。
景子は春奈の頭をポンと叩くと、車を発進させた。
坂道を登り、緩やかな左カーブを曲がる……その先の下り道は、あの海運会社の事務所に繋がっていた……。





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