〈晴らすべき闇〉-15
『名前は優愛って言うんだ。年は19。間違いなくソイツは処女だぜ』
『……なんで知ってる?』
専務は訝しがりながら八代を見た。
いくら刑事の立場を利用して情報収集をしていても、そんなプライベートな事まで知り得るはずは無いのだから。
『ソイツの姉……ま、景子の妹なんだがよ、レイプされて自殺しててよ……そのショックで男性不信になってるそうだ』
『へえ?つまり男嫌いな初(うぶ)な御嬢様ってワケかあ?』
専務の顔は崩れるだけ崩れ、早くも畜人に豹変していた。
景子一人でも高額な稼ぎになるのは間違いないのに、更に汚れ知らずの妹まで付けてやるのだから、今回は荒稼ぎ出来る予感しかない。
『ソイツはうだつの上がらない会社で事務をやってる。いつも昼飯は近所の食堂に行ってて、其処に行くのに裏道を通ってるんだ』
架純の時と同じく、写真の裏には自宅と、その職場の住所が書かれていた。
『狩りは早い方がいい。参考人で呼ばれたりして目を付けられたら、もう俺達は終わりだぞ』
『……だな。異論は無えや』
ここでも二人の意見は一致した。
もう春奈は勘づいているはずだし、早く二人の刑事を無力化しなければ、間違いなく返り討ちにあうのは“犯罪者達”の方だ。
『なあ、俺達に逆らったらどうなるか、骨の髄まで思い知らせてやらねえか?』
『クックック……そりゃあ当然だよ……当然の報いってやつよぉ』