私の愛したAn-organ-3
体育館
雅人が所属していたバスケ部が練習試合をしていた。
「へい!暁!」
パスを受ける暁、練習に励む
「・・・・」
その光景を見つめるここ・・
「・・雅人。」
当然のように彼が部員達と練習に励む光景を想い浮かべ・・
「雅人、どうして・・どうしてなの。」
悲しみに暮れるここ、胸が引き裂かれる思い
彼と居た楽しかった日々を思い返す
「くそっ、後1点取られたら俺たちの負けになっちまう」
暁たちのチームが負けかかっているようで
「・・もぅ、雅人は、居ない」
「彼は私から放れてしまった・・」
時が彼女の中で永遠に止まったようになっていた・・
だが、そんな空間は部員の一声によってフッと消える
「大丈夫かっ!?、暁!」
ハッと我に返り、顔を上げる
さっきまで活発的に練習に励んでいた部員達の動きが止まっていた
そして部員達に囲まれ暗いオーラで四つん這いになっている暁がおり
「暁?・・」
不思議そうに彼を見つめるここ
そしてわずかな間のあった後、彼は立ち上がる
「暁、どぅしたってんだよ、大丈夫か?」
心配な部員達が彼に声を掛けるが・・
「・・・・」
まるで聞こえていないかのように返答一つせず、静かに前を歩き
ここもそんな彼を心配であるも不思議そうに瞬きせず見つめ彼を目で追い
相手チームも違和感はありつつも暁が練習出来そうと判断し試合再開すると・・
「お、おいっ暁!」
暁は試合が再会されると急にパスしたはずの相手からボールを奪い、床にボールを叩きつけ、相手ゴールへ向かう。
「・・・・」
暁の様子を凝視するここ。
「おいっ、暁こっちにボール寄こせよっ!」
自分のチームからの言葉にまるで聞く耳持たず・・。
「させるかっ!」
相手チームもゴールさせぬまいと必死にガードを固めるも
「うおわっ」
疾風の如くガードを軽々とかわし、そして
「ゴールッ!」
暁達のチームは見事勝利・・、ダガ釈然としないここと部員一同
「暁・・」
彼を見つめ、何かを想う
それから暁はさっきまで細めだった瞳が元の丸目に戻ると
ドサッ
我に返ったかと想うと急に床に倒れこみ・・
保健室
「・・、う、うーん・・アレ?ここは?」
だるそうに体を起こし頭をつかむ暁
「暁ぁ」
ここと、暁と特に親しい部員3名が彼の寝てるベットへ集い
「皆、・・試合は?」
「試合なら終わったよ、お前の大活躍でな。」
「ほんと、スゲーよ。」
部員が彼を褒めるもどこかポカーンとしてる
「・・活躍?凄かった?俺が・・」
その言葉にここたちは動揺しつつも会話をつなげ
「あぁ、あのチーターのようなスピード、ほんと」
「俺が速いのはいつもの事ジャン」
「いやいや、速いにせよ、なんかが違うんだよ、なんつーか正確つーか」
「相手チームの容赦ないガードもかわしてさぁ」
「俺が?」
「うん、背の高い連中が3,4人もガードしてたのに」
「・・・」
何のことかさっぱり分からないように目をそむけ
「暁・・」
自分の手のひら見つめ言う
「俺は、確か相手チームのボールが顔にぶつかって・・それから」
「あの時は驚いたぜ、急に倒れこむんだもん」
「・・・」
「だってお前はあのくらいのボールで倒れたりなんてするタマじゃないじゃん」
「それは・・」
「にしてもお前、返事くらいしてもいいだろ?、皆心配してたのに」
「そぅそぅ、俺がパスくれって言ってんのに、無視しやがって」
言葉を挙げる部員達を不思議そうな顔で見つめ
そんな彼に部員達も不思議そうにお互いを見つめ
「暁、ホントに何も覚えてないの?・・」
ここが言葉を挙げる
「ボールが凄い勢いで向かってくるのは覚えてるんだけど、それ以降は・・」
ますます動揺する部員達
「まさか、記憶喪失?」
「いやいや、ちゃんと俺らのこと覚えてるダロ」
そんな中、ここは暁を見つめ何かを考え込む・・
夕方、部活を終え、帰宅するここと暁
「だから、覚えてないって言ってるだろっ」
「じゃあ、アレは何?あんなプレー暁らしくない」
「ここ・・・」
少し間を空け、ポツリと言う
「正確にそして確実にシュートを狙う・・、これじゃーまるで」
「ここっ!」
「!」
ハッとするここ、ダガ
「でもあの動きは本当に」
「馬鹿だなぁー、兄貴の霊が俺に乗り移ったとでも?ありえねぇー」
「それは・・、そぅだけど」
歩く速度を上げ、ここと距離を空け
「きっと負けかかって頭にきたんだろう、それで無我夢中になってそれで覚えてないんだろうよ。」
「皆も大袈裟だよ、俺がそんなんでどーかする訳ないじゃん」
「暁」
そぅ捨て台詞を吐き先に帰宅する・・
・・そんな彼の背中を見つめる
人気の無い寂しげな道、そんな二人を遠くで見つめる一人の若い女性
「あの子が・・」
「それでよー、そのオバサン布団3枚もひいてて」
翌朝、教室友人に囲まれ他愛も無い話で盛り上がる暁
その姿を見つめるここ
その後、授業中給食時下校時、彼の様子を見るもいつもどうり単純で肉食男子な彼
「はぁ・・」
一人帰宅するここ・・、ひたすら地面を見つめ
「でも・・、良かった・・カナ、暁いつも通り元気でいて、元気すぎるけど」
顔が影で暗く、微笑み
「雅人・・」
またも彼を思い浮かべる
「・・あの試合、やっぱり・・アレは・・アレは雅人・・だった」
「・・・でも、そんな事ありえないよ、そんな憑依したって?兄弟とはいえ・・」
それからハッとし、自分にこぅ言いかける
「何言ってんのよ私ったら、彼は・・雅人は死んだのよあの日の交通事故で・・」