第2話-1
お互いの両親に、私達が付き合っていること、
私達が将来考えていることを少しづつ理解してもらいます。
「結局、安定した収入と、持ち家がものを言うのよ。
それで同性間で子供ができるのなら、男なんていかがわしいもの必要ない」
真理乃さんは断言します。
「真理乃さんの、『男になんて興味ないんだってば』は良かったですね。
ご両親は黙っちゃいましたよ」
「本当のことよ。男なんてロクでもないもの。酷いのばっかり。
菜々の勤め先は夜にも誰かいるんでしょう?
泊まり勤務の人なら、トイレにカメラでも取り付けられるわね。
男は盗撮くらいするわよ」
真理乃さんの言葉に不安になって、
勤め先の営業所の女子トイレを調べてみます。
女性の少ない職場なので、トイレは限られています。
「やだ…なにこれ…」
便座の裏側に、車のリモコンキーのようなものが、
テープで張り付けてあります。
あからさまにおかしいので、自宅に持ち帰って真理乃さんに見てもらいます。
「これ、カメラよ。マイクロUSBが刺さるようになっているもの」
「ええっ!便座の裏にテープで張り付けてありました」
「どこかにメディアが入ると思うんだけれど…」
真理乃さんがいじると、蓋が開きます。
「このメディアなら確かアダプタがあったはず…」
真理乃さんは仕事で、パソコンをバリバリ使っているので詳しいです。
パソコンで再生してみます。
「やだーっ!!なにこれっ!!」
いきなり女性の排便シーンが始まります。
「対人センサーが付いてるみたいね。
動画は綺麗で明るいし、小さいのに大したものね」
「感心しないで!!これひどい!!あんまりよ!!」
私は怒りで血が沸騰します!
早送りすると複数の女性の排泄シーンが次々と現れます!
あ た ま が お か し く な り そ う で す!
「これ、菜々じゃない?」
色白のっ!無毛の女性がっ!ミリミリと太いウンチを排泄します!!
「やだーっっっ!!見ないでえーっ!!ぅうえぷっ!?」
ショックと怒りで、気分が悪くなります。
トイレに駆け込んで盛大に吐きます。
「菜々、分かった?これが男よ。男のすることなのよ」
真理乃さんは、便器にすがり付く私の背をさすります。
「ぅおえぇっ。真理乃さん、私、悔しい。やり返したい。えぇぇぇ」
私の顔は吐瀉物と涙と鼻水でグジャグジャです。
「いいわ。当然よ」
シャワーを浴びて、真理乃さんのところに戻ります。
「このまま訴え出ても、犯人が捕まえられないわね…」
真理乃さんは落ち着いて、盗撮カメラの型番を検索します。
「あった!これを通販で購入っと」
「???どうするんですか?」
私は、頭がバカになっていて、訳が解りません。
「同じものを俯瞰で設置して、犯人を盗撮するのよ」
「あっ!」
「菜々はこれを元通りにして、どこか高い所に新しいものを取り付ければ、
間違いなく犯人を特定できるでしょ?
盗撮のコピーと一緒に提出すれば、動かぬ証拠になるわ。
逆手に取るのよ」
私はすぐにでも届け出たい怒りを我慢して、
真理乃さんの指示通りにします。
数日後に、高い所に設置したカメラを回収して、
真理乃さんと動画を確認します。
「あっ!!…副所長!?そんなっ!!」
「副所長なら掃除の人が来る日もわかるわね。
うやむやにされないように、会社の偉い人に直接提出した方がいいわね。
証拠の入手方法も違法だから、警察沙汰にするのは止めたほうがいいよ。
他の角度にもカメラが有るかもね。ロッカーだってアヤシイ。
業者に調べてもらったほうがいいよ」
会社の偉い人に直接事情を説明して証拠を提出すると、
警察沙汰にこそなりませんでしたが、副所長はすぐに営業所を去りました。
「真理乃さんの言ったとおりです!男なんて敵です!あっったま来た!」
「データのコピーとプリントアウトしたものを、副所長の奥さん宛に郵送しといたわ。
菜々、毎年年賀状キチンと出してたのにね。
これで仕事も家庭もお終いね。
結局、男なんてこんなものなのよ。
女をこんな風にしか見ていないのよ。
菜々のことを本当に想っているのは同性の私だけ。
菜々は私が守るわ」