神光院謙太の結婚-2
「はい、様子見に来ました。お母さん、ごめんなさい、子宮チェックしますね。」
やってきた看護師さんがそう言うと、滅菌グローブをはめて膣口から人差し指と中指を差し込み、真剣な顔付きでなにかを調べている。
「あー、全開ですねー。もうすぐ産まれます。先生、呼んできます!」
看護師は内線電話をかけると、すぐに先生がやってきて、ママに診察を施す。
「呼吸も脈拍もよし。胎児も大丈夫です。お母さん、安心して下さい。健康なお子さんが産まれますよ。胎児の向きも大きさも正常ですから、帝王切開の必要もありません。お母さん、いよいよですよ!」
先生の言葉を聞いたママの目に力が籠もる。つま先が反り返り、膝が外に開いて、ママは両足は力強く開いている。
ママは完全に臨戦態勢にはいった。必死に呼吸をしながら、痛みに耐えている。と、先生がママに呼びかけた。
「あ、陣痛の波がきました!はい、いきんでー!」
「ヒィヒィーフー!んんんッ!!うううう!!」
ママは息を大きく吸い込んでから、歯を食いしばって、首を前に傾けるような勢いで必死にいきむ。だが、その後に襲ってきた痛みと圧迫感に耐えかねて、バンと背中を台の背もたれに叩き付けた。
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ママはまたゆっくり呼吸を整え、またやってくる陣痛の波に備えている。
「はい、次の陣痛がきますよー!」
先生が陣痛モニターを見ながら、ママに呼びかける。
「んんんんんんんッ!!グゥウウウウうっ!!」
ママが大きくいきんだ瞬間、ママの膣口から透明な液体が噴き出た。その透明な液体の中に赤い筋が入っているのが僕の目に飛び込んできた。
「羊水に血が混ざってますね。順調なサインですから、安心して下さい!」
ママは一瞬だけ笑顔になった。が、本格的に苦しくなってきたのだろう顔も首筋も真っ赤に染まり、顔に玉のような汗が浮かぶ。
僕は看護師から渡されたタオルでママの汗を拭った。タオル越しではあるが、ママのこめかみに力が籠もっているのがよくわかる。
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「はい、陣痛でーす!」
「んんんんんんんんんんんっううううううう!!!!!」
ママがいきんだ。先程とは比べものにならないほど、強くいきんだのか脇腹の筋肉がうっすら見えて、そのまま上半身がねじれていく。
「はい!頭、見えましたよ!頑張って!
先生の声に導かれ、ママは再びいきむ。
「んんんん!!!ぐぅうううううう!!はああああああッ!!」
ママは力に任せ、身体をのたうち回らせながらいきんでいる。
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もう赤ん坊の頭は完全に露出して、ママの目にも分かるほどだ。ママは勝利を確信したような目をしながら、苦痛に耐えている。
「はぁーーーーーーーー!ううううううッ!!ふううううッ!!」
「いけますよ!その調子!!」
最後のいきみで、膣口が一気に広がっ、子宮から棒で押されるように赤ん坊が体外に滑り落ちてきた。
ママは歯を食いしばり、身を丸めて力を込める。すると、バシャンと水の入ったバケツを
倒したような音がした。
「はい!産まれましたー、おめでとうございます!」
すぐに赤ん坊の泣き声が分娩室に響き渡った。
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先生から手渡された赤ん坊を抱きかかえ、優しく頭を撫でている。僕はそんなママと僕の赤ん坊を見ながら、ずっと涙を流していた。
終わり