君をもう一度抱きしめたい2-8
もしかしたら、あれは俺に助けを求めたんじゃなく、“芽衣子を連れて行かないでくれ”という意味だったのではないか。
なんとなくそんな気がして、俺は眉をひそめて久留米の顔に小さく頭を下げた。
「久留米……、芽衣子を助けてやれなくてごめんな。
俺のすることっていつも裏目に出ちまうな。
でも俺、芽衣子をあの世に連れて行こうなんてこれっぽっちも思ってなかったんだ。
必ず助けてお前のとこに返すつもりだった……って、信じられるわけねえか」
下げた頭を上げられずに、俺は流れる涙を腕でゴシゴシこすった。
芽衣子をたくさん泣かせ、未来を奪い、挙げ句に久留米の大事なものまで奪ってしまった事の重大さに押しつぶされそうになる。
俺が無理心中なんてバカな真似をしたがために、最愛の彼女と、最高の親友を不幸にしてしまった、この事実は消せるはずがない。
俺は鼻をすすってから、
「久留米……、お前には謝ったって許してもらえるわけがねえよな。
結果的に芽衣子の命を奪っちまったんだから。
だから、俺のことはどれだけ恨んでもいい。
……でも、芽衣子がいなくなったからってバカなこと考えんじゃねえぞ」
俺は声を振り絞って、それだけ言うのがやっとだった。