制御不能の恋心-2
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薄皮を剥ぐように、組み敷いた身体から丁寧に衣服を脱がせる。少し力を込めれば、こんな布くらい簡単に裂けてしまうから、慎重にならざるを得ない。
露になっていく肌から、ギルベルトを誘惑してやまない香りが漂う。もどかしくてたまらない。
「ん、ん……」
素肌に手を滑らせると、あわせた唇の合間からくぐもった可愛い声が漏れる。
外はまだ夕暮れで、月の姿は確認できない。
しかし見えなくても、月が満ちていくにつれ、体中の血はたぎりやすくなっていく。
この都会では、夜でも明るすぎて月は霞み、汚れた大気は嗅覚と本能を麻痺させる。
血のたぎりに苦労するのは、満月の夜くらいで済むようになったのに、エメリナに触れていると、全身が衝動にざわつく。
彼女が欲しくて欲しくてどうしようもない。
全てを打ち明け曝け出して、受け入れてもらいたい。
月が満ちるにつれ、危険なほど衝動が日に日に高まるのを感じた。また月が欠け始めるまで、彼女のそばにいないほうが良いと、無理を言って急に薬草採取の仕事を貰ったのだ。
「は……はぁ……」
唇を離すと、エメリナはまた両腕を顔の上で交差してしまった。
しかし隠れているのは目元だけで、半開きで呼吸を乱す唇だけが見えているのが、かえって艶めかしい。
下着のホックを外すと、真っ白な乳房がぷるんと零れ落ちる。控えめな部類にはいるサイズだが、張があり美しい形をしているし、感度もいい。
胸の先端はすでに尖りはじめていた。触って欲しいといわんばかりに震え、薄く赤味が増しているそれを直に摘む。
「んっ!」
エメリナが眉根を寄せ、短い悲鳴をあげた。片方を指で弄りながら、もう片方の乳首に軽くキスすると、さらに高い声があがる。
ドクドクと激しくなる彼女の鼓動を楽しみながら、そのまま吸い付き嘗め回した。
「や、胸……そんなに……あううっ!!」
舌で強めに弾くと、歯を喰いしばって背を反らした。自分からいっそう胸を押し付ける結果になり、目端に涙を浮かべてシーツを握り締める。
「こうされるのが好きだと思った」
ニヤけてしまうのを抑えきれず、我ながら意地悪い顔で同じ事を繰り返す。
「あっ!ん、違……んんっ!!」
ビクビク震えながら、エメリナが必死で首を振る。
口で否定しながら、胸から口を離されると、残念そうに上目で見上げるのが正直だ。それでも認めたくはないようで、羞恥と身体の欲求がせめぎ合った泣きそうな顔をして、口先の意地を張る。
「やあ、胸……もう、や……」
ああ、やっぱり可愛すぎて苛めたくなる。
そういう趣味はないと思っていたのに、追い詰めて攻め立てて、わけがからなくなるまで、むせび泣かせてやりたい。
涙でキラキラと濡れ光る頬にキスして、そう囁くと、「いじわる」と拗ねた小声で呟かれた。
鎖骨に、二の腕に、手の甲に、指先に、へそに、わき腹に、キスを落としては指を這わせていく。
エメリナの全身にしっとり汗が浮かび、甘い声がひっきりなしに零れ落ちた。身をくねらせ、胸の膨らみを揺れ弾ませる。
切なげに腰がゆらめいているが、そこに触れるのはまだ我慢した。
「あっ……あああ……」
エメリナも意地になっているのか、ときおり足を絡めそうになっては、慌てて堪えていた。
散々焦らしてから脚を折り曲げて広げさせ、濡れそぼった箇所に舌を這わせた。
「あっ!!」
急な刺激に、ビクンと激しく腰が震える。
「気持ち良い?」
「ん、んんっ!!!」
わざと尋ねると、真っ赤な顔を左右に振られた。可愛い反応に煽られ、もっと鳴かせたくなった。
あふれ出す蜜を啜り、ひくついている狭い入り口に指をねじ込むと、ぐちゅんと濡れ音が立つ。柔襞が淫らな動きで、指に絡み付いてくる。
抜き差しするたび、切ない声があがり、締め付けが強くなっていく。
身をよじろうとするのを押さえ込み、小さな肉の蕾を舌先でつつくと、甲高い泣き声が返ってきた。
エメリナの全身がガクガク痙攣し、新たな蜜をどっと溢れさせる。
「だ、だめっ!!先生っ……ギル……離し……ん、ああ……」
ギルベルトの髪に力の入らない指を絡め、エメリナが訴える。構わず舐め続け埋め込んだ指でも嬲ると、エメリナの身体が硬く引きつり、切羽詰まった嬌声が響く。
「あ、あ、ああああっ!!!」
ぎゅっと足指が丸まり、一際大きく身体を跳ねさせる。指を咥えこんだ女性器から、透明な飛沫が飛んだ。