月夜の夢-6
ゆっくり首を横に振るとポチは静かに綺麗な顔で笑った。
「最後の夜だから。思い出だけもらっていい?」
「俺のファーストキス。もらって」
ひょえ!
徹のファーストキス!
あたしたちはベッドの上で向かい合って正座した。
キスの前に正座なんか変だと思うけど
あたしたちの心境を想像して欲しい。
これからキスしますよ!って意気込んでいる
27歳女と高校生男子を。
ゆっくりゆっくりポチはあたしに近づいて
そっとキスをした。
それはあたしの知ってる徹じゃなくて
あくまでもポチだった。
近づいた時と同じように
そっと離れていくポチの肩を掴んで、あたしはポチを引き戻す。
今度はあたしのキス。
ゆっくりと唇を舐めて舌で唇をこじ開けた。
ポチの口内を執拗に舐めまわす。
息を荒くしてお互い離れたあと
苦笑いするポチをあたしは胸にかき抱いた。
「あたしに出会ってくれてありがとう」
ポチにそう言いたかった。