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10年目の恋
【ファンタジー 官能小説】

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月夜の恋-1


次の日、ポチは別れ際に不意打ちでもう一度あたしにキスをすると
さわやかな笑顔で帰っていった。

「お姉さん。幸せになってよ。
出来ることなら俺が幸せにしてやりたいけどね。彼氏によろしく」


8年前、J大であたしと出会ったということは
オヤジさんの説得に成功したんだろう。

さて、あたしには今現在の宿題が残ってる。
今日は徹の帰ってくる日だ。
あんなに純粋にあたしに恋してくれたポチだけど
それを今の徹と一緒にしちゃいけない。

今の徹は今の徹だ。

そろそろ決着をつけるときなのかもしれない。

本当は明日までの期限の翻訳を徹の帰国日までに
無理やり昼休みも返上して残業して終わらせた。
そして久しぶりに明日は休暇をもらった。

徹と別れたら。
1日ぐらい泣いて過ごしたっていいじゃない。

こんな時ぐらい無理して会社に行くことはない。
そう思いながらおんぼろビルを出たところで徹が待っていた。

「よっ」

あ、面影残ってるかも。
数日前に別れたポチの面影を徹の中に探した。

「いい子にお留守番してたか?」

その言葉にむっとする。
子供みたいに・・・

そりゃぁあたしは長谷川さんみたいに
大人っぽくありませんよ。

「・・・・・」

「あ?いい子じゃなかったのか?」

う〜ん・・・・
いい子ねぇ・・・

「いい子・・・じゃなかったかな」
「あ?」
「いや。やっぱ何でもない」
「言え」
「やだ」
「言え」
「・・・・・」
「お土産やんねぇぞ?」

「・・・・欲しい」
「だろ?言え」

「ちゅーしちゃった」
「あ?」
「ちゅーしちゃいました」
「・・・・だれと?」
「犬?」

「お前。ゆっくり聞かせてもらおうかっっ!」





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