プロローグ-4
「あ〜あ....今日もミスしちゃった....私って何やってんだろう....」
仕事からの帰り道、私・城崎梓(きざきあずさ)は今日もミスをして坪根さんにイヤミを言われて落ち込んでいた。
「城崎さん!何度言ったらわかってくれるのかしら....あなたのミスをフォローするこっちの身にもなって欲しいわ!」
「すみません....」
「あなたみたいな人がなんでウチの会社で採用されたのかしらね!」
私は頭を下げるしかなかった。
「ハァ....」
私は昼間の事を思い出してため息をついた。
「どうしたの?ため息なんかついて....」
後ろから声をかけられた。振り返るとそこに香澄・榊原香澄(さかきばらかすみ)が立っていた。
「なんだ....香澄か....」
「なんだとはご挨拶だな?」
「ゴメン..ゴメン..そんな意味じゃないんだ....」
「また仕事で失敗したのか?」
「まあね....自分でもイヤになるよ....」
私が落ち込んでいると
「仕方ないな....私の奢りだ!飲みに行こうか!」
香澄はそう言って笑った。
「香澄!大好き!!」
私は香澄に抱きついた。
「よせ!離れろ!」
香澄は私を離そうとしたが、私は離れなかった。
「イヤ!離れない!」
香澄に抱きつく手に力を入れると
「離せ!私にはそんな趣味はない!」
「私にもないわよ!」
私は渋々香澄から離れた。
「梓は私と二人きりだと昔のままだね....」
居酒屋に着いてビールを口にしながら香澄が呟いた。
「香澄の真似して出来る女を演じてみたけど....私には無理だったみたい....ミスばかり繰り返して....見た目だけでも出来る女に見られたかったんだけど....」
「梓....」
「ゴメンね....明日からはまた戻るから....今日だけは....」
「わかってるよ....」
香澄はいつだって口ではいろいろ言うけど私を気遣ってくれる....私....香澄に甘えているな....そんな事を考えていた....香澄は「男なんて面倒くさいだけ!」なんて恋愛に興味を示さない。美人なのだから勿体ないと思うのだが仕事にしか興味がないみたいだ。私は香澄の仕事の世界には詳しくないのだが、腕は確かなのでそのうち有名になると信じている。
「あ〜あ....どこかにいい男いないかなぁ....」
「いても梓を好きになってくれるとは限らないけどね!」
「ちょっと!香澄!それ気にしてるんだから!言わないでよ!」
「ゴメン..ゴメン..でも....すぐにテンパってミスを繰り返す癖直さないとまた同じ結果になるわよ!それでどれだけ終わってきたか....もう..それを可愛いと思ってもらえる年齢じゃないんだから....」
「年齢の事は言わないで....香澄の言った事はわかっているんだけどね....」
「わかっているなら....」
「私も香澄みたいに仕事に生きがいを見つけようかな....」
「それなら..外見だけでなく中身もしっかりしなさい!」
「うぅぅ....香澄の意地悪....」
その後、私はお酒を飲み、いつの間にか眠ってしまった。
「梓?なんだ....寝ちゃったのか....梓は少しお酒を控えなさいよ....」
テーブルの上に突っ伏して眠っている梓に上着をかけて、私はお酒を口にしていた。私は梓とお酒を飲むようになって酔う事はなくなった。梓の世話をしなければならないからだ。合コンに行っても、酔っぱらってくだをまきだす梓を宥めたり、眠っている梓が変な所に連れ込まれないように気をつけなければならないからだ。まっ梓にとってはその方がいいのかもしれないが、ヤリ逃げは防がなければならない。
「梓!そろそろ帰るよ!」
梓の体を揺すり起こそうとしたが
「もう....少し....寝かせて....」
梓は起きてくれなかった。
「ったく....」
私はお店の人にタクシーを呼んでもらって梓を運び込んだ。