月夜の雫-4
翌朝起きたとき、まだ徹のフライトに間に合うかな。と思ったけど
いってらっしゃいメールは何故か躊躇して、
そうこうしているうちに出社時間になった。
ポチは寝てるけど・・・
ほっといていいのかな。
あ・・・・学生は夏休み中か。
学生を卒業して久しいあたしは7月の後半が夏休みだって事実にすら
一瞬で思い出せなくて。
徹との1番楽しかったあの時も昔のような気がする。
あたしは一応ね。と通帳とハンコだけバッグに入れた。
ポチを疑ってるわけじゃないけど
薄給のあたしは、万が一これがなくなったら明日から生活できない。
「鍵はポストに入れておいて」と書き置きと共に
鍵をテーブルにおいた。
就業中は携帯が見れない状況で
昼休みに見たら「行ってくる」ただそれだけのメールを受信していた。
「そっけないメール」
徹のメールがそっけないのか
メールすら送らなかったあたしがそっけないのか
どっちもどっちのような気がする。
やっぱり残業になった夜道を歩いて家に帰ると
電気が付いているのが見えた。
まさか。ポチがいるんじゃ・・・?
変な期待とともにドアを開けると
いい匂いが漂ってきた。
「お帰り」
台所からエプロン姿のポチが顔を覗かせた。