満身創痍の初デート -4
この公園は、魔物から民を守る組織として教皇庁が結成された際、記念に世界各国から寄贈されたものだった。
モザイク模様の美しい遊歩道は、貿易と芸術の国シシリーナ。
巨大な時計塔は機械と錬金術の国フロッケンベルク。
そして広場は、魔法国ロクサリスからの寄贈だ。
円形の芝生広場は、縁を囲むように置かれた六体の天使像に見守られている。
一見はただの石像だが、スイッチを入れれば透明な結界ドームが広場を覆い、雨を防げる。
天候にかかわらずイベント開催ができるわけだ。
雨だけでなく、衝撃や音も防ぎ、緊急災害時には住民の避難所になる。
広場には大小のテントが張られ、対戦型のゲーム機が数十台、八ブロックに分けて置かれていた。
地面には太いケーブルの束が縦横し、巨大なスピーカーの奏でるビートが空気を揺らす。
広場中央には大きなステージが設置され、一組の対戦台が置かれていた。
各ブロックで予選を行い、勝ち残った八人がステージ上で本選を戦う勝ち抜きリーグ戦だが、本選で敗退しても敗者復活戦の余興がある。
優勝者以外の七人で再びリーグを組み、その勝者は優勝者へ再挑戦できるのだ。
ステージ上の戦いは、背後の大きなスクリーンへ投影される仕組みになっている。
枠組みの巨大なパネルには、獣耳と尻尾のついたゲームキャラクターたちが描かれていた。
「エントリー受け付け、まもなく終了となりまーす!!参加される方は、お急ぎくださーい!」
ゲームのロゴ入りTシャツをきた係員達が、各所で声を張り上げていた。
大会参加者だけでなく、その連れや観戦者も多い。屋台もずらりと並びホットドックや串焼きに飲料などを売りさばいていた。
キャラクターのコスプレをした男女には、カメラフラッシュの嵐が浴びせられている。
特にメイド服を着た黒豹少女や、際どい衣装のキツネ美女には、カメラマンが行列をなしていた。
「間に合いました!私はEブロックです」
エメリナが本部テントで登録を済ませて戻ると、ギルベルトは感心したように辺りを見渡していた。
「すごい熱気だな」
テンポの速い曲が大音量で鳴り、興奮した人々の熱気で、他よりあきらかに温度が高い。
駅前の喧騒など、比べ物にならない騒がしさだ。
「先生、こういうのは苦手じゃないですか?」
電化製品の集大成のような場所だ。やはり、少しだけ心配になる。
「まぁ、自分でやろうとは思わないけど、見る分には面白そうだ」
ギルベルトはスクリーンに目を向ける。
まだ予選なので、デモ画面とゲームのストーリー紹介が、交互に映し出されていた。
「休憩所でエメリナくんの勇姿を見守ることにするよ」
ポンと背中を叩かれる。
「まかせてくださいっ!」
肩の力が抜け、自然と顔中に笑みが広がる。
高揚した気分でエントリーカードを振り、エメリナはEブロックへ駆けだした。