Purple memory-9
「う・・・ううっ・・・――――――」
そのまま腹の中に溜まっていたものを吐き始めるルールーと、
霧雨の中黙って彼女の背中をさすってやるジェクト。
無論のこと傘など持ってきていない為、霧雨とはいえ半分ずぶ濡れのまま数分の時があっという間に過ぎていった。
「・・・ごめんなさい、手間をかけてしまって」
「それはいいんだが・・・どうだ、楽になったか?」
「大分楽になったわ。でも・・・何だか力が抜けて・・・・歩けそうにない」
「・・・どこだ、ルールーの持ち船は」
「目の前の・・・・・」
俯きがちのルールーとのやり取りを経て、
ジェクトは目の前に鎮座する大型ヨットを見上げると、
次の瞬間にはうずくまるルールーに両腕を回して勢いよく抱き上げた。
その瞬間を待っていたかのように、
ルールー自身が両腕をジェクトの首に巻き付け、
鼻先が触れあうかどうかの距離にまで互いの顔と顔が近くなっていた。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
岸壁から梯子に乗り移り、甲板に上がって船内に入る入り口を開く間も2人は無言のままだった。