Purple memory-17
「俺にとやかく言う資格はない。こうなってしまった後で言うのも何だが・・・」
目の前で密着するように寄り添っている女の吐息と視線を意識しつつ、
ジェクトの視線はヨットの窓越しに見える港周辺の夜景に向けられていた。
「・・・恐らくお前は、どんな男でも引き寄せてしまう魔力を持っている。
だからワッカと結婚しても、果たして魔力自体が収まるかどうか疑問、だが」
「だが?」
「・・・あるいは結婚することで何かが変わるかもしれないルールーを見てみたい気もする。
・・・どちらにせよ自分の人生なんだからな。思うように好きにしたらいいさ」
言い終えたジェクトのグラスを、
傍らにいたルールーは流れるような自然な動きで手にする。
ジェクトの手を離れたグラスはルールーの手の中に、そしてグラスの中身はそのまま彼女自身が口に含んだ。
「・・・・・・・」
身体をジェクトの胸板から離したルールーは上体を起こし、
壁を背にして座っているジェクトと正面から向かい合った。
黒髪を腰付近にまで垂らし、ほつれ毛をかきあげつつルールーは艶然たる微笑みを浮かべる。
この舟の中で交わしてきた酒のせいか、ジェクトの目にもルールーは表情や仕草の1つ1つが色っぽく、
思わず身震いしてしまいそうな感覚に襲われる。
そしてルールーは両手をベットの上で上体を支えながら、肉感のある紫色の唇を近づけてジェクトのそれを塞ぐ。
互いに密着し開かれた唇の隙間を伝って、
ジェクトの口の中にウイスキーが流れ込んでいく。
―――ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ・・・・・
ウイスキーが全てジェクトの喉元を通り過ぎ去っていった後、
ルールーはゆっくりと唇を離す。