Purple memory-16
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――――カランッ・・・・
「・・・今更だが、実感したよ。君の身体はワッカでは満足できん代物だな」
ジェクトの右手にあるグラスの中で氷が微かに音をたて、彼はそのまま自らの口許を目の前に座っているルールーの首筋に押し付けていた。
ルールーは微笑みながら首をよじり、背後に密着するジェクトの頬に口づけしていた。
――――あれから10分後、2人は身体を起こした裸体の状態でベットの上にいた。
壁に背を預け足を投げ出すジェクトと、
その間に入って顔と背中を男の胸板と顔によりかからせるルールー。
そして互いの右手には先程棚から出した年代物のブランデーと氷の入ったグラスがある。
ルールーが意識を呼び起こしている間にジェクトが手早く準備したのだ。
ちなみにジェクトの左手はルールーの下腹部に伸びており、その指先はゆっくりと黒い繁みの中の薔薇の縁を撫でていた。
ルールー自身もそれを留めることなく、ジェクトの好きにさせているのだが。
「私って・・・ワッカと結婚しない方がいいのかしら」
何気ないが重大な一言に、ジェクトは唇で垂れ下がっているルールーの長い黒髪を掻き分け、耳元で囁いていた。
「・・・プロポーズされたのか」
「ええ・・・先週ね。返事は今度の合宿と世界予選に勝ち抜いてからでいいって・・・・・」
「・・・そんな状況なのに、俺を誘ったのか・・・」
今更ながらに後輩の彼女・・・・婚約者候補を“寝とった”という実感が今まで以上に湧いてくる。