ロディオ-1
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あれ以来、一向に現れない滝山を雅恵は心待ちにさえしていることに気づいていた。
朝起きると必ずシャワーを浴びて身体を清めた。いつ来るか分からない滝山に常に気をつかって迎える準備をしていた。
朝食を作っている間も常に携帯が気になって、鳴ってもいない携帯を何度も開いて確認していた。朝から身体が疼きそれを鎮めてくれるのは滝山しかいなかった。
「おい、朝から携帯をいじるな!」
雅恵は今まで、夫の居丈高な振る舞いに対して従順な態度で接していた。だが、オスとしての務めを果たさない夫に憎しみに近い感情すら芽生え始め、存在すら疎ましく感じ始めていた。
絶対王だった夫が、もう繁殖の能力がなくなり群れからはじき出されたボロボロのライオンのように見えてしまう。それとは反対に滝山という存在がどんどん大きくなり雅恵の心と身体を支配していった。
滝山の行う調教で苦痛に悶え、羞恥と恐怖に震えながら絶頂を極め、終わりのない快楽に溺れてゆく……。卑猥な性的虐待を受けて雅恵は被虐の心が芽生え、その甘露な媚薬に浸り脳が蕩けていくようだった。
恵美がダンススクールに行く曜日を選んで滝山は車を上杉邸の脇に待機させていた。恵美がサングラスをかけて大きなボストンバックをかかえて家を飛び出していった。
現代っ子らしく処女を滝山に捧げたことなど何とも思っていないのだろう。元気いっぱいに出かけてゆく恵美を見送ってから滝山は雅恵にメールをうった。
《家の脇にいる/今から調教を行う/玄関の施錠を解いておけ/まずは口腔奉仕だ》
ローターの振動音とは比べ物にならないが、その低い震度音に身体の芯が反応した。携帯を開いて滝山からのメールであることを確認した雅恵ははやる気持ちを抑えて内容を読むと脳からじんわりと犯されていくのを感じた。
あの小指の先程の楕円球の威力に、身体はひれ伏し屈服させられてしまった。滝山の陰湿で淫靡な責めが、雅恵の心と身体をすっかり蝕んでしまったようだ。
一人になった家で雅恵は滝山に命じられた通りに玄関の鍵をといて正座して主を迎える準備をした。
「いい子だ。やっとご主人様に対して忠実な牝犬になってきたな」
雅恵は滝山のジッパーをさげるとペニスを探りだし、すぐに口腔奉仕を始めた。台地に太い根をはる大木のようなゴツゴツとしたペニスを咥えているだけで雅恵の股間はジュクジュクと音をたてるように湿りだした。
数日間の放置で性的飢餓に陥いり、いきおい鼻息荒くペニスにしゃぶりついていた。
滝山の荒くなってきた息を聴くと雅恵は自分の奉仕で感じていることに悦びをおぼえて、更に激しく頭を振り立てた。
だれも居ない一家の玄関先で粘着質な音が鳴り響く。
最初は興奮からやみくもに咥えていたペニスを、落ち着きを取り戻すと共に舌を絡ませながらその硬度を味わい始めていった。細く尖らせた舌先で裏筋をなぞり、カリから吸引しながら全体を呑み込んでいく。
その一連の動きの中でご主人様の表情を時々上目で盗み見した。それはまさに飼い主のご機嫌を伺う犬の姿だった。
「出すぞ。全部口で受け止めて溜飲しろ。いいか」
滝山は雅恵の髪の毛を掴んで全身を振り絞って精を口腔に絞り出した。
「うぐっ!」
思わずむせた雅恵はご主人様のエキスを唇の端から少しこぼしてしまった。だが滝山のペニスを口に含んだまま、ほとんどの体液を溜飲することができた。そのまましばらくペニスを口でお浄めをして、うっとりとした目で、ご主人様のお褒めの言葉を待った。
「お前はよくできたと思っているようだな」
「……」
「俺の大事なエキスをひとしずくこぼしたのを気づかなかったとはいわせないぞ」
「でも、ご主人様ほとんどは頂かせて……」
「だめだ。一滴たりともこぼしてはいけない。お仕置きだな」
滝山はこの日、はなから雅恵に“お仕置き”をするつもりでやってきたのだった。調教するうえで“お仕置き”というアクセントは必須なものだった。
雅恵はお仕置きという言葉に過剰に反応した。今までもローターを仕込まれて外に出されたり、無理やり放尿させられたり普通の神経では耐えられないようなことをされてきた。
「あの……。ご主人様、お浄めもしっかりできましたが」
「だめだ。ご奉仕には一瞬たりとも気を抜いてはならないんだ」
「でも……」
「口答えしたな。お仕置きをきつくしてやる」
「ううううっ……、赦してください、ご主人様! お仕置きは勘弁してください!」
「ふっふっふっ、来い!」
雅恵のお仕置きに対する過剰なまでの嫌悪の反応に、滝山の嗜虐の性が躍り上がる。
滝山は雅恵の襟首を掴んでリビングに引きづって連れて行こうとした時、二階の階段の脇のドアに気付いた。