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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ウェディング〜』-1

都築と会わなければ、都築は私の中で死んだのと一緒だ、都築との繋がりを全て切ってしまえばその死はより確固たるものとなる、都築から卒業できる、そう信じてた。
……けど違った。その人との繋がりを全て断つということは、その人との関係において『時が止まる』ということだったんだ。
だから私の中で、都築は五年前のまま鮮やかに生き続けてしまった。22歳のままで――――。 


そんな私の時計のネジをなんの躊躇いもなく無自覚に、くるくる回してしまう男に会ってしまった。

それは再会というよりも、邂逅……


※※※※※※※※※※※※

俺達が大学を卒業してから5年目の9月だった。

トントンと小気味よいノック。

「はい。どうぞ。」

俺は教授の代りに返事をした。

「失礼します。青田出版の真田です。」

入ってきたベージュのスーツの女性に息を飲む。

「原稿、できてるよ。」

教授はニコニコと彼女を迎え入れた。

「有難うございます。二階堂先生はホント〆切りを破られたことがありませんよね。助かります。」

彼女は俺を完全に無視して教授の元へ行った。

「失礼します。」

教授の渡した原稿の枚数を確認すると

「確かに受け取りました。来月もよろしくお願いします。」

にっこりと微笑。完璧な営業スマイル。

「コーヒーでも飲んでく?」

教授は俺には言った事のない言葉をかけた。

「すみません先生。これから田中先生と伊藤先生の原稿とりなんです。また今度、戴いても宜しいでしょうか。」
「そっか。あいつら原稿遅いもんなぁ。真田さんも大変だね。」

教授は心底残念そうだ。

「じゃ、佐伯君。真田さんを下まで送ってきて。」
「あっ、はい。」

いきなり話を振られて焦った。

「いえ大丈夫です。母校ですから。」

営業スマイルのまま、やんわりと断れたがここで引き下がるわけにはいかなかった。

「僕もちょうど下までコーヒーを買いに行くところだったので、一緒に行きましょう。」
「そうですか・・・」

営業的苦笑を浮かべ、彼女は頷いた。

「では失礼します。」


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