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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ウェディング〜』-3

雪見が縁を切りたくなる程、うちのサークルで何か嫌な事があったことも、この時初めて知った。
そう言えば4年生になってからは殆どサークルに顔を出していなかった。でも、4年になってサークルに来なくなるのは普通なことなので、気にも止めていなかったが・・・

(あいつ、卒コンにも来なかった。)

卒業式の後の卒コンはOBも集まるし、原則全員参加の行事だった。

何にも知らない。何にも気付いてやれなかった俺は、これ以上雪見を追及する資格はないと、彼女の連絡先を諦めた。

そして月日は流れ、卒業してから5年目。
まさかこんな所で再会するとは。

俺は大学院の博士課程に進んでいて、博士論文もほぼ書き終わり、来年の4月から講師としての就職も決まっていた。雪見は就職してから5年目な筈だった。

あいつの就職先が青田出版という主に雑誌を出版する会社であり、俺の指導教官がそこで連載を持っていることは知っていた。

けれども、まさか雪見が二階堂教授の担当をしていて、原稿を取りに来ているなんて・・・

「先生、真田さんいつから来ているんですか?」

研究室に戻り、キリマンジェロの缶を放り投げてから聞くと

「半年前くらいかなぁ。今の連載の第3部から担当してくれてるから。そう言えばいつも佐伯君がいないときに研究室に来ていたなぁ。今日会うの初めてか。何?興味あるの?でも君、来年には広島じゃないか。」

教授はいらんことを勘ぐってくる。

「若い男女がいるととりあえずくっつけて仲人になろうと企むのはヤメて下さいよ、先生。」

頭の切れ抜群の教授をどうにかかわしながら俺は落ち込んだ。
半年間も気付けなかった・・・。

それでも1ヵ月後、彼女が俺のいる時間に研究室に来ることを、俺は疑わなかった。雪見が約束を破ったことは、一度もないからだ。

果たして10月15日。研究室に入ると彼女はもう来ていた。今日は焦げ茶のタートルを中に着て黒いスーツ。どこから見てもキャリアウーマン。

雪見は先月と同じ様に教授の元に行き、先月と同じ様に原稿を受け取り、先月と同じ様に教授のお茶のお誘いを断った。ただ違ったのは、その「理由」だけ。

「佐伯さんとこれから飲みに行く約束をしているんです。」

馬鹿正直に言う雪見に立場が悪くなった俺は慌てて言い訳した。

「同期なんです。大学の。」
「ほぅ。」

教授はニヤニヤ笑いながら俺等を送り出した。
「あんな、正直に言うことないだろ?」

大学時代よく来た学生向けのバー『ゼロ』で、シャンディーガフと一ノ蔵を頼んでから俺は抗議した。


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