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『graduation』
【青春 恋愛小説】

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『graduation〜ウェディング〜』-13

これは俺の深層心理が出たのだ。


どこかで思ってた。

こんな女絶対に無理、と思う一方で。

フラフラして大丈夫なんかいな、と思う不安定な彼女を一生支えてやれるのは、「誰か」じゃなくて「自分」しかいないんだって。

ツヅキをかつて愛していた彼女ごと受け止めて愛せるのは、俺しかいないって。

キスもしていない、手も握っていない女だけど、俺は彼女をよく知っている。

少なくとも、もう2度と離したくないと思うくらいには...

“広島行き○○○便のお客様は、搭乗手続きをすませて〜〜“

無情にも搭乗を強く促す放送が流れた。

「答えは?」

急かすと、呆然としながらも雪見がどうにか口を開いた。

「ぜっ善処しますっ。」

とっさに飛び出してきた言葉に2人で驚いて、2人で笑ってしまった。
雪見は正直なヤツだから、この答えは期待していいということ……と思っておこう。

「約束するから。きっと毎日楽しいって思えるようにするって。」

俺はギュッと1度雪見を抱きしめると、荷物検査の入口へと向かった。
後ろを振り向くと、まだ雪見が正気に戻っていない姿が見えて、可愛かった。
いつも主導権を握っているのは自分だ、なんて思ってるからだよ、バーカ。

雪見の真似をして後ろ手でバイバイと大きく手を振った。
携帯の番号を聞くのを忘れたことに気付いたが、まぁイイやと思った。
もう何も怖くない。
俺はもう、彼女に踏み込むことに決めたから。
青田出版にだって電話してしまう。
二階堂教授の名前だって使ってやる。
そう思ったら腹の底から力が湧いてくるような気がした。


4月まで2週間もない。
雪はもう解けている。
春は近い。
桜もきっと、すぐに花を咲かせるだろう。

(終)


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