神光院謙太の結婚-1
突如、僕の頭の上に柔らかくも重たいものが乗っかかった。
「なにしてるんだ…おい…」
僕は呆れた調子で声をかけると、クスクスと笑い声がかえってきた。
「どけなさい、小百合…!」
「ん〜?パパ、なにをどけるの??」
「なにって…。すぐにわかるだろ…!そのおっきい胸だよ!!」
「えへへ!すごくおおっきいでしょ〜!」
「ったく…、そんなトコだけ無駄に大きく育って…。」
僕は軽く息を吐いて、自分から離れる。すると、小百合は唇を尖らせて僕ににじり寄ってきた。
「もうパパったら!小百合はただパパに『行ってきます』の挨拶したかっただけなんだよ!」
「ああ、もうそんな時間か…、小百合は仕事?」
「そう、今日も朝からお仕事なんだよ…。イヤになっちゃう…。」
「おいおい、そんなこと言うなよ?楽しんだろ、仕事?」
「うん!仕事は楽しいよ!!それに、小百合はパパと違って、ちゃんとお仕事してますからね!」
「……小百合…。」
「なにかしら、パパ?」
小百合は唇をクッと上げて、不敵に微笑んだ。その顔は小百合の年齢に不釣り合いで、ひどく大人びた表情だった。
小百合はモデルをやっていた。モデルと言ってもファッションモデルとか、そんないいもんじゃない。いわゆる、ロリータモデルって奴だ。イメージDVDだとか写真集と称して、年端のいかない女の子にいかがわしい衣装を着せて、いかがわしいポーズをさせるという例のアレだ。
小百合はそんなロリータモデルの中でもトップクラスの人気を誇っているらしい。僕から見ても、小百合は人気が出そうな体型ではあった。身体はちっちゃく肉付きがいい。顔は幼く可愛らしい感じ。それに加えて、胸は無駄に大きいんだから、人気があって当然かもしれない。
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「ねえ、パパ!小百合の写真集見てくれた?」
「み、みてないよ!!」
小百合は僕の娘で、やっぱ自分の娘のいかがわしい写真集なんて気恥ずかしくてみてらんない…。だから、僕は小百合のDVDだとか写真集はまったく見ないようにしている。
「もう!小百合はパパに一番見て欲しいんだよ!」
「い、いやだよ!!見たくないよ!」
と、そのとき、ドアを開けてリビングにママがやってきた。
「小百合、仕事の時間だよ?」
「ええ、やだ!!もっとパパと一緒にいたい!」
小百合は駄々っ子のように僕の腕を掴んで、嫌々!と顔を横に振る。小百合の両腕が僕の腕に絡みつき、小百合の大きな胸がグイッと僕の身体に押し付けられた。
「小百合、文句ばっかいうもんじゃないよ!行くよ!!」
ママは語気を強めて小百合に命令する、それでも嫌がる小百合。ママは小百合の腕を強引に掴んで引っ張る。
「わかった!もう!」
小百合は不満そうな顔でママにそう言うと、今度は僕の方に振り向き、ニコッと笑って言った。
「パパ、行ってくるね!」
ふたりは僕の部屋を出て行った。
「まだこんな時間か…。」
僕はもう一度ベッドに潜り込み、寝ることにした。