結び目のない赤い糸-1
紳士
「はじめまして」
この人が僕のお見合いの相手かあ。
婦人
「はじめまして」
この人が私のお見合いの相手なんだあ。
紳士
「カナヤマテツヤです。よろしくお願いします」
いつものことだけど、やっぱり緊張するなあ。
婦人
「スハラミノリです。こちらこそお願いします」
こういうの慣れてないから緊張しちゃう。
紳士
「今日は天気が良くて、お見合いにはもったいないですね」
写真の印象とぜんぜん違って、めちゃくちゃ可愛い。
婦人
「ええ、私もそう思います」
写真で見るよりずっとイケメン。
紳士
「雨よりはいいかもしれないですね」
確か28歳で、薬剤師をしている人だっけ。
婦人
「それもそうですね」
確か私より10歳年上で、システムエンジニアをしている人だったよね。
紳士
「とても素敵なお洋服ですね」
違うだろ、服を褒めてどうする。
婦人
「ありがとうございます。いちばんいい洋服を選んできました」
ふうん、そっちを褒めるパターンね。
紳士
「あのう、お見合いは初めてですか?」
僕はもうこれで7回目だもんなあ。
婦人
「はい。なかなか出会いがなくて」
だって、女ばっかりの職場なんだもん。
紳士
「……」
ヤバい、お腹が空いてきた。
婦人
「……」
どうしよう、くしゃみが出そう。
紳士
グウ……
しまった、お腹が鳴った。
婦人
クシュン……
いけない、やっちゃった。
紳士
「せっかくなので、料理をいただいて体をあたためましょう」
風邪をひいてるのかな?くしゃみも可愛らしいなあ。
婦人
「冷めたらもったいないですもんね」
食いしん坊な人?照れた顔も素敵かも。
紳士
「お酒は飲まれるほうですか?」
自分は一滴も飲めないけど、彼女はどうなんだろう。
婦人
「嗜む程度にいただいています」
毎晩飲んでるなんて言ったら、やっぱり引いちゃうよね。