午前零時-1
「はぁ?財布がない?…困りますよお客さん」
「すみません、どこかで落としたみたいです」
目にうっすらと涙をため、本気で焦っている表情からして
”どこかで落とした”様だ。
しかしこちらは仕事。そんなもの通用しない。
タクシードライバー歴20数年、46歳の俺はこの手の客にはそうとうめぐり合っている。
ただし、ほとんどの場合は酔っぱらいやはったりだ。
ごくたまに本当に落とした奴もいるのだが。
ただタクシードライバー歴20数年の俺でも、
その客がこんなに若い女だったことはない。
そう、今日はラッキーだ。
AM0:03
表示された時間を見て、俺は決めた。
その下のメーターに表示されているのは6000円ちょっとだ。