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卑弥呼
【歴史 その他小説】

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卑弥呼-3

「そうですか。まさか公孫氏が滅ぼされたとは…」
会議の後、卑弥呼は男王からの報告を聞いていた。その中で公孫氏が滅ぼされた話が出て、さすがに驚きが隠せなかったようだ。
「姉上の占いにもそのようなものは出なかった。とはいえ、まさか一支国や対馬国がいい加減な情報を言うはずはない。やはり公孫氏は…。」
「もはやなくなったものは仕方がありません。使者を選ばなければ。」
卑弥呼は切り替えが早い。悲しみに浸っていては狗奴国との緊張状態で遅れをとってしまう。
「使者にはカルとミコトにしましょう。」
「は!?ミコトはともかく、カルは礼儀も知らない武人。使者には不向きです。」と男王は反論する。
二人とも三十を過ぎ、働き盛りだが、性格は全く違う。ミコトはもとは一支国の人間であったが何かと気がつき、誰とでも接することができるので各国の王が邪馬台国に来たときのもてなしや、逆に各国への使者として有能は人材である。邪馬台国に仕えるきっかけとなったのも、一支国の使者として邪馬台国に赴いたのがきっかけで、末廬王同様、卑弥呼の呪術に心酔してしまった一人である。
カルは邪馬台国生まれであり、勇猛な武人として有名である。昨年の狗奴国との戦いでも真っ先に敵に突撃し、邪馬台国軍が押され撤退を始めた中で最後まで踏み留まって戦った戦士であり、この時の奮戦によって一軍を預かる将となっている。その反面礼儀作法などは知らず、男王であっても物怖じせずにズバズハ言いたいことを言う。
この二人、性格こそ全く違うが、不思議とウマは合い、よく二人で遅くまで酒を飲む中である。(周囲の人間には夜遅くまで迷惑な話だが、相手がカルであるため何も言えないのが現状なのであるが…)まるでお互いの不足を補い合っているような というのが周囲の見解である。唯一の共通点と言えるのが、卑弥呼への忠誠心であろう。
正使と副使の相性ならば文句はないが、礼儀知らずのカルならば問題は大きい。男王が難色を示したのも強ち間違いではない。
「カルは頭は悪くありません。それに使者としての仕事はミコトに一任します。」卑弥呼は男王の疑問を察したようだ。
「では、なぜカルを?」
「カルにはあちらの国の軍の在り方を見てきてもらいます。今の邪馬台国は単独では狗奴国に適いません。武器・作戦など気付いたことを報告してもらいます。あちらは強大を誇った公孫氏を滅ぼしたほどの軍事力を持つ国。学ぶことは多いでしょう?」
「なるほど…」男王は卑弥呼の着眼に驚いた。確かに、戦争になったときに負けるのは邪馬台国であり、そのためにもあちらの国のありかたを学ぶべきであろう。
「では、すぐに二人を呼んできます。」
男王はまた急いで退出した。

「お役目、果たしてきます。」ミコトははっきりとそう答えた。
カルは少し納得がいかないようだ。(この隙に狗奴国に攻められたらどうする。あんたらじゃ太刀打ちできんだろ)と心の中で呟く。それが表情に出ているようで、ミコトが「カルが昨年から鍛えた兵はなかなか強い。まぁカルがいない間は持ちこたえられるだろう。」と説得した。
ミコトに言われると不思議と納得して、カルも頷く。
十日後、ミコトとカル、そして末廬国と投馬国が用意した献上品を乗せた船が対馬国案内のもと、大陸に向けて出発した


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