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卑弥呼
【歴史 その他小説】

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卑弥呼-4

カルとミコトは韓の国に到着した。
「やっと着いた〜。」カルが大きな伸びをする。「無事に着いてなによりだ。」と、ミコト。
「あの持衰(じさい)には褒美をたんとくれてやらんとな。」と二人は汚れきった男を見る。
持衰とは、航海の時に船と一行の安全を神に祈り続ける役目をもった男である。その間、体を洗うことはもちろん、食事や飲み水も制限しなければならない苦しい役目であり、もし嵐にあったり船の積み荷や人員に被害があったら有無を言わさず殺されてしまう。その代わり、無事に航海を終えたら褒美や名誉が与えられる役目である。
最初カルは「何だ!?この汚ねぇやつは!それに臭え!」と言って持衰には近寄ろうともしなかった。ミコトは持衰の存在を知っていたが、その体臭には敵わずにやはり距離を置いていた。
しかし、対馬国を出発してしばらくすると船は時化に見舞われた。カルはもちろん船には慣れていたミコトも船酔いになり、船そのものが転覆する恐れもあった。
しかし、持衰は一向にひるまず、船の舳先に座ったままただひたすらに海の平穏を神に祈り続けた。
やがて海が穏やかになり、カルとミコトの二人が船酔いから解放され、乗組員から持衰のことを聞くに及んで、カルやミコトは持哀に対しておおいに敬意を表すようになった。
「いや、あの時化の時に舳先にずっといたなんて、あんたの勇気は大したもんだよ。」「まったくです。私も船には乗り慣れたつもりでしたが、あなたには及びません。」とわざわざ持衰のもとに行って語り掛けたりした。しかし持衰はなにも答えずにこにこと微笑んでいるだけであった。
やがて船は無事に韓の国に到着し、今に至る。
持衰はというと、今水浴びをしている最中であり、それが終わると清められた体で再び航海の無事を神に祈るのだ。
とりあえず持衰が水浴びを終えるのを待っていた二人であったが、「ようこそ、ご無事で。」という声に二人は声のしたほうにむいた。

出迎えたのは韓の国の役人。事前に対馬国が知らせておいたので出迎えに来たのであろう。「今日はおつかれでしょう。宿の準備もできておりますので、そちらでおくつろぎください。」
『これはありがとうございます。』ミコトは韓の国の言葉で返す。さすが使者に選ばれただけあってミコトは言葉遣い・態度も落ち着いている。カルも一応言葉の練習はミコトから受けたが成果はあまりなく、カル本人が「しゃべりは全てミコトに任せた!」と匙を投げている。
そんなことを言いつつ今日の宿でもカルは高鼾であったというからそのあたりがカルの強さであろうか。

数日後−−。一行は韓の国から出発して帯方郡へと入り、そこでまず帯方郡の役人と接触した。一応韓の国からの伝令で知らされていたため邪険に扱われることはなかったが、荷物なども一々検査されている。
そしてその後、ミコトたちは役人にある場所へと連れていかれた。
役人に案内されたのは帯方郡の政庁のような建物であった。「今日はおつかれでしょうからおやすみになってください。明朝、大守さまがあなた方と会われます。」


「わしが帯方郡の大守である劉夏じゃ。遥か海の彼方からよう参られた。歓迎するぞ。」大守の劉夏は言葉遣いこそ傲慢な印象を受けるが心底ミコトたちを歓迎している様子であった。
「ははっ!我々倭の国のものは元々公孫氏と縁がありましたが、その公孫氏を打ち破った国があると聞き及び我らを使者に出しました。公孫氏が滅びた以上新しい国と友好を結びたい。そのために我らが参り、また、貢ぎ物も持って参った次第であります。」
「ほう、それはよい心がけじゃ。我らとしても歓迎しよう。」と劉夏も万更ではない様子だ。
倭国の態度は節操がないと言えなくもないが、まさか倭国が海を渡って攻めてくるわけでもなく、神妙に貢ぎ物も持ってきたので劉夏は疑っている様子はない。むしろ、朝貢してきた国が増え、国家としての威信が増したというほうが重要なのであろう。


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