機械音痴の考古学者-3
考古学やレンジャーの依頼に対して、ギルベルトはとても真剣だ。素敵だと思う。
しかし普段は穏やかで人当たりの良い青年であり、携帯電話も使いこなせないなど愛嬌のある姿も見せる。
そんな所はまるで人懐こい大型犬のようで、たまらない。
総じて、ギルベルトが大大大好きだ。
「でもなぁ……」
頭を動かすと、結んだ亜麻色の髪が、サラサラと揺れる。
エルフの母親に似た唯一の部分。
チビで童顔で平凡な容姿の自分は、半分どころか95パーセントは人間の父親似だ。
父親のことは大好きだが、女子として産まれた以上、綺麗になりたかったという欲はある。
(あ〜ぁ、私もお母さんみたいに綺麗だったらなぁ)
透けるような白い肌、宝石のような蒼い瞳。亜麻色の艶やかな髪。スラリとした肢体に繊細な美しい顔。
人間の父親と恋愛結婚した母は、典型的なエルフの容姿をもっている。
いつまでも若く美しいエルフは、よく長寿と思われていたが、実際の寿命はほぼ人間と同じだ。
ただ一定まで成長すると、外見は老いず、寿命とともに急激に身体が朽ちるだけ。
だから、母の外見はどうみても十七歳程度で、童顔のエメリナとも姉妹にしかみえない。
エメリナがここで働くと勝手に決めた時は、十八歳で一人暮らしなんて!と一番反対した。
結果、週一の電話報告を条件に折れてくれたが、何かと実家に帰ってくるように仕向けてくる。
過保護だとは思うが、優しい母が好きだ。
一人暮らしの大変さで、親のありがたみも知った。
だけど……美しい母が心底羨ましくて、顔を見ればつい苛立ってしまうのだ。
自分の得られなかったエルフの美しさが、ねたましい。
そんな自分は、本当にみっともなくて嫌なのに……。
一人暮らしを選んだ本当の理由は、それだ。
「はぁ〜……」
机に顎を乗せ、飴色のなった古い天井を見上げた。
大好きなギルベルトを、嫌いになりたくない。
でも、このままもっと深みにはまってしまったら……それが怖い。
ちょっと前なら、ほっぺたスリスリされても、人懐っこさからだと容認できた。
半月前に一度だけ、身体を重ねてしまうまでは……。