恥辱指示-2
「どうだい。よく聞こえるかい」
薄い携帯電話の中に滝山がいるような感じだ。
「携帯を窓辺に置いて」
携帯を置いたのを見届けた滝山は、改めて体を出窓に向き直った。
「服を脱いで下着姿になって」
雅恵は横を向いて目を瞑ったまま動かなかった。
「ねぇ、同僚に写メ送っていいかな。部長に恨みを抱いている人間は社内には多いからね。“上杉部長の淫らな奥様”なんて題名つけてもいいかもね」
「お願いです。そんなこと出来ません。ゆるして」
雅恵のか細い声が聞き取れた。
「僕の指示が聞けないというの。じゃあまず同僚に写メ送ろうかな」
「わかりました! 脱ぎます! 脱ぎますよ!」
まだ午前中だというのに5月の陽射しは真夏のように照りつけている。木々の新芽が一斉に吹き出すように手を延ばしているようだ。誰もいないことを確認してから雅恵は泣きだしそうな顔でトレーナーを脱ぎ棄てた。茶系の色をしたブラがあらわれ、パンツのホックをはずし腰骨から剥くように下げると、おそろいの色のショーツを穿いたむっちりとした下半身がむき出しになった。
「素敵な眺めだ。僕に見せるために茶色で統一してくれたんだね」
下着姿を出窓で晒さらし誰かに見られるのではないかとビクビクした。それと同時に滝山に見られて、いちいち感想を言われることによって、確実に外から雅恵の姿が見えることを知らされる。下着の色なんてその日の気分で決め、滝山を意識したことではないのだが、そんなことに反論する余裕はなかった。
「その尖ったブラの中身が見たいな」
「いや! もう勘弁してください!」
「うん? 何かな?」
とぼけた滝山の声が携帯から返ってくる。いくら赦しを乞うても、やんわりとした脅迫で追い込まれてしまうのは解っている。それでも雅恵の羞恥心が懇願させる。
「お願い、お願いだから、ゆるして……」
無言の携帯電話に脅迫され、のろのろと後ろに回した手でブラのホックを外すと紐が
緩みカップが落ちそうになり、思わず両腕で押さえてしまう。
「さあ、見せて」
低い滝山の声に押され、いくら抵抗しても従わされてしまう状況を恨み両腕をだらり
と垂らして顔をさげた。羞恥心に打ちひしがれた姿とは対照的に乳房は瑞々しい輝きをもってツンと上を向いて弾け出ていた。
「そこでおっぱいを揉んでみて」
「何を言っているの! そんなことここで出来るわけありません!」
何もできずに立ちすくんでいる雅恵に滝山は指示をだす。
「写真をばら撒くようなことはしないからね。だから両手で下から持ち上げて揉んでごらん」
写真のことをチラつかせながら淫らな行為を強要する滝山に、泣きそうな気持ちを抑えながら力なく雅恵が乳房を揉み始める。
「今日は奥様の寂しい身体をたっぷりとなぐさめてやるからね、ふふふっ」
3
雅恵は強制される淫らな行為に打ち震え、息を吸いながら声を震わせた。
その時頭の中で昨日の光景がフラッシュバックした。咥えさせられた赤銅色のペニスはゴツゴツとして、こじ入れられた口の中で大きく傘を開いていた。大きく口を開かないと入りきれない太さをした滝山のペニスが目の前にうかぶ。
考えまいとしても、目の前に仁王立ちした滝山の逞しいペニスと自分の乳房が揉みし抱かれる姿が目に浮かぶ。滝山の大きな手は、その外見に似合わず女の弱点を優しくついてきた。力強く絞ったかと思うと、絞り出された乳首を軽く摘まみ指で転がす。隙をつくように吸引して、ねっとりとした舌を絡ませてきた。
自ら乳房を揉みし抱きながら、雅恵の頭の中で滝山の行為がだぶる。
「ああ……」
(こんなにも恥ずかしいことを強制されて、私、私……!)
裾野から頂きの小豆にかけて揉みほぐすようにしているうちに、どんどん淫靡な血流が先っぽに集中していく。昨日の非日常的な猥雑な時間と卑猥な指示に服従せざるを得ない今の状況に雅恵は脳が痺れていくような感覚に陥る。
「掌で乳首を転がしてみて」
「はああ……。もう、ゆるして……」
硬い蕾となった乳首は掌でコロコロと転がった。強制指令に従わされて行われる自慰行為に雅恵の被虐の気持ちが煽られてゆく。昨日の淫行によって呼び起された肉欲が身体の中で渦巻き始めている。執拗な愛撫によって、永らく遠ざかっている夫との営みから覚醒した淫らな気持ちが煽りたてられていた。
それにもまして拘束されて繰り広げられた破廉恥な行為が、雅恵の性的拒絶の壁を打ち破り、今まで知る由もなかった被虐の世界へと引きずり込もうとしていた。
「乳首を指で摘まみ上げてコリコリと転がして。どう、舌で舐られたいだろ?」
「うううっ! 言わないで……」
身の中から痺れたような重いうねりを生じていた。雅恵の腰に重い淫欲が宿り、じんわりとバギナのあたりが疼き始めた。絞り出された乳房から爆ぜた乳首をネロネロと舐られた感覚が甦り、腰がモジモジと焦れ始めている。三十路のむっちりとした太腿を擦り合わせながら湧き上がる欲情を、貞操な妻の顔をした雅恵が必死に抑えようと葛藤していた。