コックリング-10
「ありがとう俊介君。大好きよ、もうひと踏ん張りよ」
冴子は痛みに耐えている俊介を本当に愛おしく感じると同時に自分が与えている苦痛にあえぐ姿に興奮していた。冴子の目は潤み、息も荒くなっているのだが俊介にはそんなことに気付く余裕などなかった。
「つううううううっ! いつうぅっ!」
「もう少しよ、もう少し!」
最期の数ミリを押し込むと飾りの小粒のシルバーの玉がペニスの先に着けられたピアスのようだ。冴子は苦痛に喘ぐ俊介を見上げながら先端をつまんでゆっくりと回した。
「ぐわあああああっ! 痛いっ!」
「ふふふっ、とってもきれい」
縮みかけているペニスを指の腹で支えるようにしながら撫ぜていると、だんだんと元のように突っ張り始めた。
「まだ痛むの?」
酔ったようにトロンとした目で見上げると俊介は肩で息をしながら呟いた。
「……もう……もう、大丈夫。痛くない」
「ありがとう、俊介君。私のモノよ、俊介君」
一度収まってしまえば痛みは無くなるようで普通に触ってもなんともなさそうだ。
「お礼に出してあげる」
タップリと塗り付けたローションで照りついた肉の棒が重たげに突き出ている。プラグを呑み込んでいるせいか若干太くなったようだ。
「すごい、俊介君すごいわよ」
俊介の背後から抱きつくようにしてペニスをしごいている冴子はクサビの打ち込まれたペニスを研ぎ続けた。金属の棒を呑み込まされて逞しくなったペニスに冴子は手の中のゴツゴツとした感触を楽しんでいた。
「すごい硬さ。俊介君、素敵」
「ああっ、逝きそうです。くっ!」
ピクリと腰が振れて、プラグの先から放たれた牡の精がトロンと出てきた。ゆっくりとした射精は快感を引き延ばす作用がある、とのことだった。俊介もプラグによってもたらされる、自慰では感じたことのない快感が長引くような気持ちよさにひたり、何度か至極の震えで硬直を繰り返した。
「会えない間このプラグをしたまま私のことを想像しながらオナニーしてね。必ず2回は逝きそうになっても我慢するの。3回目に出していいから。分かったわね」
肩で息を整えている俊介が無言でうなずいていた。
9
技術部の竹中部長にうながされて、冴子は一緒に屋上の喫煙所にいた。全く繋がりのない部ではないが、わざわざ技術部部長から声がかかるのは不自然だった。竹中部長もそんな配慮があったから、わざわざ打ち合わせ室や通路での立ち話を避けたのだろう。
竹中謙蔵は50歳くらいだろうか。銀縁のメガネをかけてチョッと、とっつきづらい印象だった。ロングサイズのタバコを取り出して遠方を見ながらふかしつづけている。
まさか本当に一緒にタバコを吸いたいから誘ったわけではあるまい。冴子はしびれをきらせて質問した。
「あの……私に何か……」
その時清掃係の老人がよたよたとこちらに歩いてきた。専用のバケツに溜めてある吸い殻を袋にいれている。
「ごめんなさいね。お邪魔様です」
ゆっくりとした動作で吸い殻を袋に移し替え、灰皿を刷毛で払っている。
いつもだったら優しい言葉の一つでもかける冴子だが、今日はその緩慢な動作にさえ苛立っていた。ようやく作業を終えた老人が屋上から去ると冴子は竹中部長に向き直った。
「私も忙しいもので、無駄な時間つかいたくないのですが」
相変わらず、あらぬ方向に煙を吐いている部長に苛立ちをぶつけた。
「君は……。君は小宮山とお付き合いでもしているのかね」
今度は冴子が黙りこくるばんだ。どう答えようか逡巡していた。
「どういうことでしょうか……」
冴子の頭にいろいろな憶測が駆け巡る。部長は遠方を見ながらチラリと横目で冴子を見てから言った。
「少し前の夜遅く、小宮山が君をデスクに押えこんでいるのを見てね」
小宮山にポンプをつけられて狂わされた後、家に行くのを拒んでいた時だったろうか。まさか人に見られているとは思わなかった。
「ふざけていたようですね。少し酔っているようでした」
「小宮山は変人だが、社内で飲酒するようなことはしないし、酒気を帯びて仕事するような人間ではない」
(そういえば小宮山はこの人の部下だったわ)