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サディスティック・スパイラル
【SM 官能小説】

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コックリング-11

黙っている冴子に竹中が向き直った。初めて対峙すると思ったより大きく見えて威圧感があった。
「小宮山は階段から落ちたといって会社を休んでいた」
「そうらしいですね」
会話の糸口をみつけて何とかつなぎたかった。黙っているとどんどん囲まれてゆくような閉塞感におそわれる。
「今日から出社している」
畳み掛けるように短く話す竹中に冴子は、確たる何かを知っていると直感した。
再び長い沈黙がおとずれた。
冴子は視線を合わせるのが怖くて、先程まで竹中がしていたように遠方の山の稜線をみているふりをした。
「ああいった手合の口を割るのは簡単でね」
強い風が吹いてきて思わず冴子は髪の毛を抑えた。竹中は意に反さずに話し続けた。
「作業場にいた小宮山の指を万力で挟んでやった。『指がつぶれると骨は縦に亀裂が入って激痛が走るそうだね』といってやった」
得体の知れない恐ろしさを冴子は竹中に感じた。ガッシリとした体躯をしているが、獣のような匂いは感じさせない。むしろ無臭な冷たさを漂わせている。
「すべてを話した」
最初にそれを言わずに遠回しに聞いてきたところに竹中の狡猾さが出ている。冴子の出方を窺がっていたのだ。
「それで私にどうしろと」
竹中はそこではじめて破顔した。笑うと薄い唇が酷薄な印象をより強くしている。
「君は相当気が強いのだね。よろしい。では単刀直入に云おう。私のパートナーになってほしい」
「私はもう結婚はいたしません」
冴子はきっぱりといった。
「いやそういう事でない。では言い直そう。私と主従関係を結んでほしい」
あまりに突拍子もないことに何を言ったらいいかわからなくなった。
唖然とする冴子に竹中は遠くない過去のことを話しはじめた。

数か月前に他県に異動した女子社員と竹中は長年におよびSMパートナーだった。社内の密告により上層部の知ることになり独身の女子社員だけ遠方の営業所に飛ばしたらしい。竹中の話はどこにでもある話だが違うのは普通の不倫のカップルではなくサディストとマゾヒストのカップルの別れだったことだ。
その嗜好まで知れたのかは不明だが、まだ男尊女卑の傾向が強い会社だから女子社員だけが泣きをみることになったらしい。
「私の嗜虐の嗜好を満足させるのは君しかいそうもない。どうかな?」
真正面からみる竹中は爬虫類のような目をしていた。
「もしお断りしたら」
うっすらと笑いをうかべて竹中は吸い殻をもみ消した。
「君と小宮山君がつきあっている、とでも噂話を流そうか。そこら辺にいる噂好きのスピーカー社員に吹き込めばアッと言う間に広まるさ」
実に痛い所をついてくる。こんな狡猾で冷酷そうな爬虫類に捕まったらどんな責めを受けるかわからない。思っただけで身震いしそうになる。
「分かりました。でもお答えするまで猶予を頂きたいのですが」
「今週末まで待とうじゃないか。良い答えをまっているよ」
そう言い残すと竹中はさっさと屋上から姿をけした。


10

相原理緒のいる庶務課はこの会社では、何でも屋の仕事をしている。文具の調達から修繕関係など様々な雑用をこなしていた。修繕など力や技術を伴う仕事は嘱託社員が行うが、調達文具の各所への届は理緒が走り回ってやっている。
冴子はまだ足りている文具の調達を至急届けてほしいと庶務に連絡した。
果たして理緒が段ボール箱に注文した品を入れて届けにやって来た。
理緒は冴子の顔を見て一瞬強張った表情になったが、すぐに平静をよそおっているのがハッキリわかった。思ったおとり、よからぬ噂を耳にしているのだろう。
「ボールペンが2ダース、ファイルケース20、ホッチキスの針が10箱、以上ですね。こちらの方に受け取りのサインを頂けますか」
「ありがとう。助かります。あの……、相原さん、でしたよね。ちょっとお話したいことがあるのでお昼過ぎに第3打ち合わせ室に来てもらえないかしら」
理緒の顔に戸惑いの表情がうかんでいる。
「あのね、私自身が変な噂に迷惑しているの。あなたの誤解も解いておきたいし。よろしいわね」


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