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サディスティック・スパイラル
【SM 官能小説】

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第一章 ポンプ-1



(だからデブは嫌いよ)
 片桐冴子は切れ長の目で小宮山周二の太った背中に刺すような視線を向けて、尖った心の言葉を投げつけた。
小宮山は、100キロを超える肥満体を揺すりながら狭い社内の通路を通り抜けてゆく。その突き出した大きな腹が社員のデスクの後ろや脇を抜けるときにぶつかる時が多々あった。
 「ごめん、ごめん」
そんな時、小宮山は汗をぬぐいながら小声でおどおどしながら謝りながら歩きすぎてゆく。
 最初の頃こそは、笑顔で応えていた冴子も度重なる小宮山の無神経な接触に段々と心の中に苛立ちおぼえるようになっていった。特に大事な顧客への売り込みについて神経を集中させている時などに後ろから大きな脂肪の塊をぶつけられると持っているペンを投げつけたくなった。
 冴子の勤める光学精密機器メーカーは株式こそ上場していないが、世界も認める分析器を製造・販売していた。
営業職の冴子は今年の春に課長に昇進した。三十半ばで、女子社員の中で課長に昇進するのは異例の出世だった。冴子の卓越した頭の回転の速さとトークにくわえ、その美貌も売り上げアップに貢献していることは誰もが認めていることだった。
 苛立った気持ちを落ち着かせるために、冴子は席を立ち屋上の喫煙所に向った。

 冴子は二年前、夫と離婚をした。原因は夫の浮気。
相手の女が冴子よりもずっと若い二十歳そこそこの女だと分かった時、何だかすごくバカにされたような気持ちになり収拾がつかなくなるほどの怒りを感じてしまった。
冴子は系列会社の営業職だった夫の熱烈な求愛に根負けするような形で結婚したのだった。常に夫の熱い視線を感じながらの結婚生活は冴子にとって、とても居心地の良い生活だった。冴子も夫の期待に応えるべく常に整った身体と美貌を保つ努力を惜しまなかった。
家庭内で常に美しい女王として君臨していた冴子にとって、ただ若いだけの牝に夫の心が動いたことは許し難いことだった。
結局、夫はすぐにその女と別れたようだが、夫との関係も修復できないまま破局に至った。子供がいないぶん、随分とあっさりした別れとなった。
冴子の美貌とスタイルに魅かれ、求愛してくる男性も多かったが冴子は一切寄せ付けなかった。むしろ求愛してくる男を手厳しくはねつけることに快感すらおぼえるようになっていた。

屋上でタバコの煙を上に吹き上げ、冴子は三日前の晩のことを思い出していた。
社内でもイケメンで有名な谷俊介がここ一か月、盛んに冴子に誘いをかけてきていた。冴子は度重なる俊介の誘いをかわしていたが、どうしても一度、一緒に飲みにいって欲しいと熱望され、ついにその誘いを受けたのだった。
冴子は俊介との会食に、いつもより念入りに化粧し、長けの短めなスカートで胸を強調するような服装にした。男が勝負をかけてくる日は冴子もチョットした興奮状態になる。
どんなふうに男が自分を口説くのか、それに対して自分が冷たく振った時のことを考えるだけでわくわくする。
冴子のいつもより色気のある姿を見て男性が目をぎらつかせて口説きにかかる。自信ありげな態度が、徐々に形勢が劣性に傾いてきたときの必死な姿。そして見事にはねつけてやったときの落胆ぶり。
男性が冴子の言葉によって打ちのめされて逝くのを見ていると濡れてくる。そんな夜、冴子はきまって激しい自慰にふけった。
待ち合わせ場所にあらわれた冴子の姿を見た俊介は、目をあちらこちらに動かして、明らかに冴子の艶めかしい姿に動揺していた。
(ふふふっ……この子、強気に誘っていたクセに意外に憶病)
イケメンゆえに今まで女を口説く必要さえなかったのだろう。立場が逆転してすっかりペースを乱されているにちがいない。
イタリアンにエスコートするまではよかったが、俊介はその店を出る時は滅多打ちされた挑戦者となって退場することになるだろう。
「俊介君、幾つだったけ?」
冴子はリキユールでほんのり赤くなった顔でわざと酔ったようなふりをした。
「私は、28歳になりました」
「俊介君、“私”なんて顔じゃないわよ。僕よ、僕」
「はぁ……。 僕って、顔してますか?」
「私から見たら、まだボクちゃんだわ」
俊介はあきらかに少し怒ったようだ。
「冴子さん、酔っているんですね」
「あら、まだ冴子さんなんて呼べる関係じゃないわよ。貴方、そんな歳で私を満足させられる?」
一瞬驚いたような顔をした俊介は、これはイケると判断したようだ。再び自信を取り戻した表情で片頬だけ引き上げて顔をつくっている。
(この表情! この顔で女を口説いてきたのかしら)
「私に満足しなかった女性はいませんよ」
冴子は唇を舐めた。女が唇を舐めた時は興奮した時のあらわれだ。
だが、冴子はこれから起こる男の落胆を予兆して興奮しているのであって、俊介の思っている興奮ではなかった。
「冴子さん、私は狩人だ。前から貴女に狙いをつけて弓を引く機会をねらっていたんだ。今夜、いよいよその矢を放つ時がきたようだね」
(たまんないわ、このボケ!)
「矢を放つって、随分細い物放つのね」
「はぁ〜っ!」
のる気の相手をうっちゃって、冴子はドキドキしている。そしてさらに追い打ちをかけてゆく。
「貴方、セックスは顔でするものじゃないのよ」
「……」
「貴方、今まで何人の女を口説いてきたの」
「数人……いますけど……」
「口説く前に、顔で釣ったんじゃない」
すっかりやる気を削がれた俊介のシンナリした顔を見て冴子は酔ったふりのまま別れてきた。
その夜、俊介に騎上位で乗っている自分を想像して激しいアクメに何度も達した。



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