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サディスティック・スパイラル
【SM 官能小説】

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第一章 ポンプ-2



おどおどとした表情で小宮山が何か話しかけている。デスクに座ったままの冴子は最初、小宮山が何を言っているのか分からなかった。というよりは、自分の仕事を中断させられたことに腹が立ち、ハナから小宮山の話をまともに聞く気がなかった。
ようやく小宮山が、話があるので第3打ち合わせ室に一緒に来てほしいと言っているのが分かった。
第3打ち合わせ室は、主に上司が部下を呼んで小言を言ったり、人に聞かれたくない話をするのに使われる狭い個室だった。
小宮山は、分析装置の必需品であるポンプの設計と組み立てをてがけている職人みたいな存在だった。顧客のニーズに合わせた特注の分析装置は、その付属品であるポンプも特注品となる。
小宮山はそのポンプを設計させると右に出るものがいないほどのスペシャリストだった。主体の分析装置からすると脇役のポンプだが、それは無くてはならない必需品だ。小宮山は蔭で“ポンプ屋”と蔑まされながらも匠の技術だけで、この会社に生き残っているようなものだった。
営業部所属の冴子と技術部所属の小宮山とは縁もゆかりもない部署だった。本来別々の場所に位置する部署だが、世界を市場にしている会社とはいえ、やはり株式上場していないぶん手狭な感は否めない。だから、営業職の冴子と技術部の小宮山などが同じフロアーに混在しているのだった。
上司でもない小宮山の申し出は、全く不可解なものだ。繁忙を理由に断ることもできたが、冴子はこのビクついている小心者の巨躯が何を言いたいのか興味がでてきた。
手の空く時間を指定して第3室に入ることを承諾した。

狭い室内で小宮山は何も動いていないのに吹き出す汗をタオルでぬぐっていた。
肥満体の男達はどうしてこんなに汗をかくのか不思議だ。
「ぼ、僕は前から営業職のヒトと、こうして話をすることが、会社の将来を良い方向にむかわせるに違いないと思っていたんだ」
違う部署同士が邂逅することは大切なことだろう。だが、ポンプ専門職の小宮山と冴子が話をしても何も得るものはないはずだ。小宮山は誰かの受け売りの言葉を必死になって冴子に説いているにちがいない。
普段誰かと論議すらする必要のない小宮山は、自説を披露する興奮にだんだんと話に熱を帯びてきて、先程の他部署邂逅説から自分のポンプの素晴らしさだけを語り始めた。
冴子はあまりのバカバカしさに時間を無駄にしたことに後悔しだした。
「――だから、片桐さん、是非時間をつくっていただきたい」
眠気で本当に目をつむりかけていた冴子は聞き返した。
「えっ、何ですか?」
「で、ですから、あの……。ぼ、僕と……。あの、一席もうけますから……」
冴子はまじまじと小宮山の顔を見た。真っ赤になった顔から増々汗が吹き上がり、タオルで隠さんばかりに拭っている。一席もうける、という言い回しに思わず吹き出しそうになった。
(この人、マジで私を口説こうとしているんだわ)
一蹴してしまうことは簡単だが、冴子は小宮山が自分に対してどんな口説き方をするのか見たくなった。
(一席もうけて、小宮山さんが和服で現れたりして!)
冴子は自分の想像に本当に吹き出して口に手を当てた。
「はっ? 片桐さん、えーと……。ど、どうでしょう……」
冴子は込み上がる笑いを呑み込みながら答えた。
「解りました。では日時はいかがいたしましょう」
平静をよそおいながら小宮山が指定する時間と場所をシステム手帳に書き留めた。


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