君とサヨナラする日1-15
食事を終えた二人は、再び車に乗り込んだが、しばらく黙ったままだった。
久留米は未だに何か思う所があるのか、難しい顔をしたまま、ハンドルを握った手に額をくっつけていた。
やはり芽衣子の行動は、奴にとってショックを隠しきれずにいたらしい。
芽衣子もそんな奴に声をかけづらそうにしていたが、やがて気を取り直したように、ニッコリ笑って久留米の肩を叩いた。
久留米がゆっくり芽衣子の顔を見ると、彼女は重い空気を破るように明るい声で、
「久留米くん、次は海見に行きたいな」
と、言った。
それでも浮かない顔の久留米。
確か芽衣子の荷物は、夕方に久留米のアパートに運ばれる予定だったはずだから、今から海になんて行ってたら間に合わないという懸念があるのかもしれない。
「……なあ、もっと近場にしないか?
夕方までにオレのアパート帰んないとまずいだろ」
難しい顔の久留米に対し、少し困ったように笑った芽衣子は、
「大丈夫、長居しないから。ほんの少しでいいから海が見たいの。
久留米くん……お願いします」
と次第に真顔になって、久留米に頭を下げた。