猫-3
夜の街での情事を終えてきた俺は、帰り道に公園を散歩していこうと思った。
わざわざイラつく元凶を思い出そうなんて、我ながらおかしなことだとは思ったが、夜の公園にいるであろうアベックを拝んでやろうなどと、おかしな理由をつけてもいた。
とにかく歩きたかった。なんでもいい。自由を感じたい。
めまぐるしく頭の中で考える自分を自嘲しつつ、夜の公園を徘徊する。
思いのほか人はおらず、しんと静まり返っていた。
「まぁ、これが夜だな。」
どこか実感のない何かを確認した俺は、もう少し歩いて帰ろうという気持ちになっていた。少し満足していたんだろう。
「ニャーン」
ベンチ近くで猫の声を聞いた時、俺はどこか期待しているような気になった。
あの理恵とかいう女にか?男も知らなそうな女に?胸もない女に?
一瞬恋愛という文字も浮かんだが、それは絶対にありえないということは分かっていた。
「恋・・ね、ありえない。」
無意識にベンチに座っていた。
どこか胸が痛む。
センチメンタルに浸るようなガラじゃないはずだが、忘れたはずの記憶を探る自分がいた。猫が俺の足元に着く。
「頼むからこっちにこないでくれよ。」
どこか昼の会話を思い出しながら、お願いしてみた。
「はっ、茶番だな・・・。」
夜の公園に一人、猫としゃべる自分。
なんとも言えない空気で俺は数分、ベンチに座り込んだ。