怪物への階段-5
「おまえ、いつからこれ吸ってんの?」
頬杖をつきながら見つめてくる田口の視線にゾクッとするものを感じた優奈。
「去年の夏だよ。大学生のバンドやってる人から勧められてさ。」
コカイン袋をポケットに入れる優奈。そして田口を見て微笑む。
「初めはライブする前に吸って気分を高めるのに使ってたんだけど…」
田口がニヤリとして言葉を遮る。
「今じゃセックスに、か?」
一瞬真顔に戻る優奈だが、すぐにニヤ〜っとした笑顔を浮かべた。
「うん。田口、わかるね〜!」
「真面目な女が豹変する姿を散々見てるからね。」
「田口って…ヤバい奴なん??」
「どうだかね。」
ますます得体が知れなくなってくる。田口を見る目が変わる。田口の陰の部分が段々大きく感じられてきた。
「で、今から誰かとそれ使ってヤルの??」
「えっ?今日はしないよ。彼氏いるわけじゃないし。」
「でもせっかく快楽の粉を手にしたのに何もしないのは勿体無いんじゃないの?」
またもやニヤリとする田口。
「誘ってるの?」
「ああ。」
意外そうな顔を浮かべる優奈だが戸惑いながら微笑を浮かべる。
「私なんか田口のタイプじゃないと思うけど?」
田口は顔を寄せて優奈の顔を覗き込みながら言った。
「それを吸ってどんぐらいオマエが乱れるのか、興味あるし。いや、俺なら今までよりももっとオマエを乱れさせてやるぜ?」
優奈が押されるのは珍しい事だ。
「凄い自信ね。」
「だって、自信あるから。」
その表情は実に堂々としていた。
「田口が誰かと付き合ったっていう話は聞いたことないけど、経験あるの?」
「試せば分かるさ…フフフ」
田口の瞳を見ていると刺々しい鉄の鎖に繋がれて引き込まれそうな怖さを感じる。しかしそれがスリルに感じてしまう優奈。危険な橋を渡るのは嫌いじゃない。
「私をガッカリさせない?」
挑発する優奈をサラリとかわす。
「ガッカリさせる自信はないな。」
優奈は満面の笑みを浮かべた。
「いいわ。ヤラせてあげるよ。」
優奈は田口に軽くキスをした。
「家来いよ。たっぷりと吸わせてやるよ。」
「マジ?タダで?」
「ああ。楽しませてやるよ。」
2人はマックを出る。優奈は危険な香りにどんどん吸い寄せられていく。田口の腕に絡みつき、これから起きる危険な夜に胸を膨らませていた。