脱出への試み-1
チャンスが、あるとすれば三度の食事のときだろう。
それは、前から考えてはいた。
実行に移さなかったのは、何ら情報を得ず、手ぶらで帰ることへの躊躇もあっただろう。それより、脱出の成功度の低さが何よりの壁となっていた。
元締めがアジア物産の社長だと解った今、組織ごと潰せる決定的な証拠も掴んだことになる。
そして、脱出への後押しに弾みをつけたのは、すさまじい性的虐待だった。
こんなことになるのであれば、証拠を掴まなくとも、もっと早く脱出を試みれば良かったとさえ思えてくる。
どんなに危険で成功度が低くとも、もうこれ以上の屈辱には耐えられなかった。
一日、三回の食事時の中で一番隙ができるとすれば、朝食時だろう。
奴らの行動は夜型だろう。だとすれば、朝が一番手薄になるはずだ。
いつものように、若い組員が朝食を運んできた。
アキラはバスローブを着崩して座っていた。
組員はチラリとアキラを見て、朝食を置いて出て行こうとした。
「アナタも私が責められるのを見ているんでしょ?」
若い男は黙って出て行こうとした。
「ちょっと待ってよ。アナタ、私を抱きたくない?あんな風にされて、私、朝からおかしくなっちゃって…。どう、私と?」
「ミスターの女に手を出す訳にはいかない。そんなことばれたら、とんでもないことになる」
男は、目を宙におよがせながら答えた。
「じゃあ、手でしてあげる。あなた、自分でしてるんでしょ?」
男が明らかに動揺しているのがわかる。
「昨日もあの後、ミスターに散々責められて…。クネクネするオモチャを入れられて。おかしくなっちゃった、ふふふっ」
アキラは、昨日のことを思い出していた。
クネリバイブを出し入れされながら、クリトリスを毛筆で責められ、しゃがんでいる事が出来なくなったアキラは後ろ手に縛られたままベットへ運ばれた。
改めてバイブと筆責めでたっぷりとよがり狂わされた後、四つん這いにされアヌスにバイブを突っ込まれた。
後ろ手を手綱がわりに引かれながら、後ろから挿入された。
全身を弓なりに反らせて、何度も往かされた。
ハシタナイ言葉を言わされ、尻を叩かれながら突き上げられた。
尻を叩かれると、自分が本当に家畜となってしまったような気分になった。
それでいて家畜におとしめられて、拘束されて責めを受けているのに次々に襲ってくる絶頂に何度も往ってしまう自分が情けなかった。
若い組員がアキラの話を聞いて、興奮しているのが見て取れた。
「ねっ、手でしてあげる。大きくなったら口で…」
アキラが男に近寄った。男は、宙をにらんだまま動かなかった。
身体を寄せて男にもたれる。
ジーンズの上から股間に手を延ばすと、すでにはちきれんばかりになっている。軽くさすってやると、すぐにむしゃぶり着いてきた。
アキラは男の股間に手を当て、膝を割り込ませた。その膝頭で思いっきり股間を蹴り上げた。
ぐうあぁっ!
その場で崩れ落ち股間を押さえてうめく男の腕を逆に捻り、関節を捻じ曲げた。
関節が外れるイヤな音がして、男が叫んだ。
「大きな声を出さないで!もう片方も折るわよっ!」
アキラは男の身体を探ると携帯電話を見つけた。開くとディスプレイのアンテナ表示が圏外を示していた。
近くにある金属の配水管に携帯を着けると、なんとかアンテナ表示が出たが、すぐに圏外の表示に変わってしまう。
港湾署へ電話をかけるが圏外とアンテナ一本の表示を行ったり来りの電話は、一向に繋がる様子がなかった。
「どうした、遅いじゃないか何をやっているんだ」
通路の奥から、仲間を探す声が聞こえてきた。
アキラはドアの陰に身を隠した。
「何だあっ!」
ドアの外から部屋の中で倒れている若い組員を見て、無防備に仲間の男が入ってきた。
アキラは仲間の男の毛髪を掴み、思いっきり膝蹴りを顔面に突き入れた。髪の毛を掴んだまま二度、三度と膝蹴りを入れると、その男も崩れていった。
ドアの外に新たな仲間の男が現れた。
カアアアァッ!
アキラが空手の息吹をしながら、手刀を前に出して構えた。
ドアの外の男が素早くボクシングのように構えた。
アキラの後ろで、金属音がした。拳銃の撃鉄を起こす音だ。
「ふざけやがって、このアマあぁっ!手足を一発づつ、打ちぬいてやるわぁっ!」
膝蹴りを顔面に食らった男が腫上がった顔で拳銃を構えていた。
「よせ、ミスターの女だ。手を出すのは、マズイ」
ドアの外の男がボクシングの構えをしたまま言った。
アキラは拳銃を構えた男の怒気から本気で発砲することを確信し、構え
を解いた。
ツカツカと近寄ってきた拳銃の男が、思いっきりアキラの頬を張った。
脳震盪を起こしたアキラが崩れ落ちた。