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訪問調教
【SM 官能小説】

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羽化-1

 あの日、男が帰った後、みゆきは、地下室のカーペットの上でいつまでも動けずにいた。
 夫が帰ってくる、午後9時が近くなってから慌てて、起き上がり身の回りを整えた。
 夫が顔をまじまじと見たので、ドキリとした。

 「あれ、飲んでいるの?」

 顔が上気して赤くなっているのが飲んでいるように見えたのだろう。 目も潤んでいたに違いない。

 「ううん、違うの。さっきまでトレーニングしていたからじゃない」

 みゆきは嘘が見破られるのじゃないかとドキドキした。
 だが、夫はその話題についてはそれ以上触れようとはしなかった。

 “ゆるしてください、ご主人様”

 なぜ、あんなことを口走ったのか。みゆきは考えていた。
 男の責めを逃れるためか。
 いや、違う。
 自分を男に対して賤しめることによって、被虐感に支配されたのだった。
 被虐感に支配されることによって精神的均衡を保とうとしたのだ。
 決して男に本当に奴隷として遣えるつもりだったのでない。
ガサツで下劣なあの男の言いなりにされている自分に浸たることによって発狂するのを防止していたのだ。
 他人の前で排泄を見られるという、最大の恥辱にすっかり気が動転してしまったらしい。
 男の手管にすっかり嵌まってしまったのは確かなようだ。
 だからと言って自分から進んで男の調教を受ける訳ではないのだ。
 また、やって来るだろう男に、弱みを握られ、仕方なく脅されているのだ。
 だが、男のいう“M”が引き出されたのは確かのようだ。
 束縛され、恥辱を受けることによって生じるあの絶頂感は、今までに味わったことのないものだった。
 ジワジワと締めつけられ、イジイジといたぶられ、最後にそれが快楽となって噴出するあの感じが 病み付きになってしまったのは認めざるをえない。

 


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