.天ヶ瀬若菜の憂鬱 第3話-1
「どうして獣姦に興味があるの?」
若菜が良子に尋ねた。良子はもう吹っ切れたのか、顔を若菜に近づけ小声で話し出す。
「あの、犬は人間より先に死にますよね?すごく好きな男性が先に死ぬのが分かってるのってすごくつらいことでしょ…?私、後悔を残したくないんです。大好きなロンとセックスせずに死んでしまったら、私、凄く後悔すると思うんです。人からしたら、ロンは単なる犬でしかないけれど、私にとってはとても大切な恋人だから…。それで、若菜さんに…。」
「ああ、もう先生的にはロンとセックスするって決めてるのね。それで、セックスのやり方を教えて欲しいということね?」
良子さんはグッと肺に空気を吸い込んだ後、フーッと吸い込んだ空気を吐いてから若菜に言った。
「そうです。犬とセックスできるというのは知っていましたけど、やり方までは知りませんから…。そこで、天ヶ瀬さんに教えていただこうと…。」
良子さんは自分の言いたいことをすべて若菜に話したらしく、それ以上何も言わなかった。しばらくふたりの間に沈黙が流れる。
そんなとき、ふと若菜の頭に考えが浮かんだ。
「ねえ、先生、だったらロンに人間とのセックスのやり方を覚えて貰うのはどう?女性からリードしてセックスするなんて、プライドの高い男性はは嫌かも?」
良子さんは若菜の考えに思うところがあったのか、若菜から目を反らし、喫茶店の床をみつめながら悩んでいる。
「ロンの童貞が欲しいっていうなら、話は別だけどね!でも、男にとって童貞なんてカッコ悪いだけじゃないかな?」
若菜は悩む良子さんへさらに言葉を浴びせた。良子さんは喫茶店の床を見つめながら、長い間、悩み続けていた。