に乃花-14
「ううっはあ、おねがい、うふう、あふん、いい、いい……」
乳首は柔軟にころがされて、乳房は彼らの私物となっている。
「患者の汁の甘いところだけが味覚に染みるよ」
「奈保子さんの味は素晴らしい」
「この粘つき、この感度。僕の指では間に合わない」
「クリトリスもまた興味深い」
「いやらしい体を持っているのなら、検査の前にきちんと言ってもらわないと困りますね」
「こういうことをされるのが好きか嫌いか、僕らにはわかります。婦人科のにんげんですからね」
それぞれに好き勝手なことを言いながら、自分の趣味を私に押し付けてくる。
けれどもしょうがない。この体がすべてをあらわしているのだから。
「卵子には精子が必要でしょう」
「健康な子宮があるうちに、産める体づくりをやっておきましょうか」
それは違う──。
不妊の原因は別れた夫のほうにあったのだから、今すぐ射精されたら私は妊娠してしまう。
「いやあ……だめ、やめてください……」
「あなたらしくないですね、小村奈保子さん」
院長が厳格な口調で言った。
「不妊治療を望んだのは、あなたじゃないですか」
その言葉に私は矛盾を感じた。今日はただの検診だけで終わるはずなのだ。
「どうして我々が不妊治療のことを知っているのか、という顔ですね」
院長はにんまりして、
「時は熟したようだ」
つぶやいたあとに白衣をひるがえし、分娩室を出る前に右手で拳をつくる。
人差し指と中指のあいだから、さらに親指を突き出す。
何かのメッセージか、それとも気まぐれから出たリアクションか。
院長の姿がドアの向こうへ消えた直後、三日月みたいに鋭い目をした男性スタッフが、真上からこちらを見下ろしていた。
そして剥き出しの陰茎で私の骨盤を突き上げる。
「うんぐっ」
私、犯されちゃう──。
グロテスクな男性器が私の体を軽々と貫いた。
黒く伸びきった皮をぬらぬらと光らせて、あっぷあっぷと膣を窒息させる。
危ない快感が絶え間なく衝突していた。
私はただへらへらと舌を出して、犬みたいに、はあ、はあ、と息をするのが精一杯だった。
正義の人物なんてあらわれない。
このまま精液を注がれて、卵子と結びつき、着床してしまえばそれまでだろう。
産めるだけ産め、精子ならいくらでもくれてやる──そんな彼の腰使いに、私は気絶寸前まで上り詰めようとしていた。